検品せずに返品で勧告、下請法による規制について
2020/04/20 コンプライアンス, 下請法

はじめに
公正取引委員会は10日、靴製造販売の「リーガルコーポレーション」(千葉県浦安市)が下請業者に納入品を品質検査せずに返品していたとして再発防止を勧告していたことがわかりました。未検品での返品事例は初めてとのことです。今回は下請法による規制を見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、同社は2018年8月~2019年10月、靴などの製造委託をしている下請業者26社に対し、納入時に検品せず客からのクレームがあった際に一部を不良品として返品していたとされます。中には納入してから8年経過した後に返品した例もあり、違反額は計1147万円にのぼるとのことです。下請事業者側からは返品基準も定まっておらず、数年前のものまで返品されて納得できないとの声が寄せられていました。
下請法による規制
下請法では下請業者と取引を行うに際して、親事業者に一定の義務と禁止事項が規定されております。まず義務としては①書面の交付(3条)、②書類の作成保存(5条)、③代金支払期日の決定(2条の2)、④遅延利息支払い(4条の2)が規定されております。そして禁止事項としては受領拒否や代金支払遅延、返品や買いたたき、報復措置や不当な利益提供要請などが規定されております。違反の疑いがある場合には公取委による報告徴収、立ち入り検査(9条)、違反の際には是正勧告が出されることとなります(7条)。以下返品について具体的に見ていきます。
返品の禁止
(1)親事業者
下請法の規制が適用される前提として親事業者と下請業者の関係にある必要があります。これは親事業者側と下請業者側の会社の規模で決まります。具体的には①親事業者側の資本金が3億円超で下請業者側が3億円以下、②親事業者側の資本金が1千万円超3億円以下で下請業者側が1千万円以下の場合となります。なお情報成果物または役務提供委託の場合は3億円の部分が5千万円となります。
(2)返品の要件
下請法4条1項4号によりますと、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに」納入品を返品する行為が禁止されます。公取委のガイドラインによりますと、下請業者の責に帰すべき理由とは、上記3条の書面に明記された内容と異なる場合や製品に瑕疵がある場合とされます。またその場合でも受領後速やかに検査し返品する場合、またはロット単位の抜き取り検査をする継続的取引の場合は最初の支払い時までに返品する場合に限られるとされております。なお3条の書面に委託内容が明確に記載されていない場合や検査基準が明確でない場合、検査基準が恣意的に厳しいなどの場合は返品は不可とされております。また委託内容と異なることや瑕疵があることが直ちに発見できない場合でも、受領後6ヶ月経過した場合も返品不可となります。
コメント
本件でリーガルコーポレーション社は下請業者からの納入品を検査せずに顧客からクレームがあった場合に不良品として返品していたとされます。また場合によっては納入後8年経過してから返品していた例もあるとのことです。これらは上記ガイドラインに定められた返品の要件を満たしていないと言えます。また返品基準も定められていなかったとも言われており、書面の作成と交付を義務付けている3条にも違反している可能性があります。以上のように下請法では下請業者に委託する場合は納入品の品質や検査基準を書面に記載することや速やかな検査等が求められております。これらの手続きに不備は無いか、また要件を満たしていないにも関わらず不良在庫を返品していないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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