ドラッグストアで逮捕、店舗での業務妨害行為について
2020/04/01 コンプライアンス, 刑事法

はじめに
名古屋市内のドラッグストアで3月25日、「俺、コロナなんだけど」などと叫び咳をした男が威力業務妨害罪の容疑で逮捕されていたことがわかりました。マスクが売り切れていたことに腹を立てたとのことです。今回は店舗や営業所などで居座りや迷惑行為が行われた場合に成立し得る犯罪について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、名古屋市天白区のドラッグストアで25日午後1時頃、来店した男が女性店員にマスクの売り場をたずねたところ既に売り切れていると言われ、腹を立て「俺、コロナなんだけど」などと叫び咳をしたりして営業を妨害したとのことです。男が立ち去った後に店員からの通報を受けて防護服を身に着けた警察官10人が出動し、防犯カメラの映像などから男を特定し威力業務妨害罪の容疑で逮捕したとされます。その後の検査で男は新型コロナウィルスには感染していないことが判明しました。男は容疑を認めているとのことです。
威力業務妨害とは
刑法234条によりますと、威力を用いて人の業務を妨害した者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることとなります。ここに言う「威力」とは、「犯人の威勢、人数および四囲の情勢からみて、被害者の自由意志を制圧するにたりる勢力」を言うとされております(最判昭和28年1月30日)。相手を怯えさせたり、嫌悪感を覚えさせるような行為が該当すると言えます。なお従業員が労働争議として行う同盟罷業行為などは形式的には「威力」に該当しますが、労働組合法によって認められた正当な行為として違法性が否定されることとなります。
業務妨害の具体例
実際にあった威力業務妨害の事例としては次のようなものがあります。満員の食堂内に20匹の蛇を撒き散らし大混乱に陥れた事例(最判昭和7年10月10日)。スーパーマーケットの店内にゴキブリ十数匹を撒き散らして大混乱に陥れた事例(神戸簡裁平成28年7月12日)。消防職員が上司の執務室の引き出しに赤く染めた猫の死体を入れておいた事例(最決平成4年11月27日)。市役所に爆発物を仕掛けたとメールを送った事例。普天間飛行場で米軍機にレーザー光線を当てた事例。このように相手に畏怖や嫌悪感などを覚えさせるあらゆる行為が該当することとなります。
その他問題となり得る犯罪
その他問題となり得る犯罪としてはまず脅迫罪が挙げられます。相手または相手の親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知した場合は脅迫罪となり2年以下の懲役または30万円以下の罰金となります(222条1項、2項)。次に店側から退去を命じられたにもかかわらず居座り続けた場合には不退去罪にも該当し得ることとなります。不退去罪では3年以下の懲役または10万円以下の罰金となります(130条後段)。実際多くの場合で不退去罪に抵触する行為が行われていると言われております。
コメント
本件で容疑者の男はマスクが売り切れていると言われたことに腹を立て、「俺、コロナなんだけど」「陽性だから」などと叫びながら女性店員に向かって咳をしたとされております。このような行為は外形的に相手方に畏怖や嫌悪感を与えるような行為にあたり威力業務妨害罪に該当する可能性が高いと言えます。また本件ではすぐに立ち去ったとされますが、通常の場合店舗で迷惑行為を行う者は店舗側から退去を求められても退去せず、酷い場合には数時間にも及んで居座ることも多いとされます。このような場合は不退去罪にも該当することとなります。店舗や事務所などで迷惑行為を行った場合はどのような法令違反に該当するのかを把握し、実際に発生した場合に迅速に対処できるよう備えておくことが重要と言えるでしょう。
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