公取委がマスク販売で自粛要請、抱き合わせ販売とは
2020/03/02   コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに

 公正取引委員会は品薄が続いているマスクを他の商品と抱き合わせて販売することは独禁法に違反する可能性があるとして業界団体に自粛要請をしていたことがわかりました。一部のドラッグストアで栄養ドリンクなどと抱き合わせられていたとのことです。今回は独禁法が規制する抱き合わせ販売について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、新型コロナウィルスの感染拡大に伴いマスクの品薄状態が続く中、全国展開しているドラッグストアの一部店舗でマスクと他の商品を抱き合わせて販売していたとされます。抱き合わされていた製品は熱冷ましの冷却シートや栄養ドリンクなどで、1箱500円程度のマスクに対し最高で9000円近くの製品も抱き合わされていたとのことです。ドラッグストア側はマスクを購入する顧客に対し早期治療を目的に薦めていたとしています。公取委は独禁法に違反する恐れがあるとしてドラッグストアの業界団体に自粛を要請しました。

抱き合わせ販売とは

 自己の供給する商品に、不当に他の商品を抱き合わせて購入を強制する行為は抱き合わせ販売として禁止されております(独禁法19条、一般指定10項)。不公正な取引方法の一つです。人気のあるゲームソフトに不人気なソフトを付けて販売するといった行為が典型例と言えます。違反した場合には排除措置命令が出されることがあります(20条)。なおボイコットや不当廉売、優越的地位の濫用などと違い抱き合わせ販売には課徴金は規定されておりせん。以下抱き合わせ販売の要件を具体的に見ていきます。

抱き合わせ販売の要件

(1)行為要件
 一般指定10項では、「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己の指定する事業者と取引するように強制すること」としています。ここで「他の商品」とはメインの商品とは別個のものである必要があります。たとえば歯ブラシと歯磨きをセットにし、旅行用パッケージとして販売する場合はそれで1個の商品となることから「他の商品」には該当しません。これまでの審決例では人気ソフトと不人気ソフト、ワープロソフトと表計算ソフト、教科書と普通図書、エレベーター部品と取り替え工事、農業機械と融資と言ったものが挙げられます。そしてメインの商品を購入するには抱き合わせられた商品を購入せざるを得ない客観的状況であることが必要とされます。

(2)公正競争阻害性
 抱き合わせ販売の公正競争阻害性は①購入者の商品選択の自由の侵害と、②抱き合わされる商品の市場における競争の減殺と言われております。欲しい製品を購入するには不要な製品の購入も事実上強制されることから商品選択の自由を歪めるということです。また本来性能や価格優位性で競争すべきところを、他の人気製品によって購入させると公正は競争が阻害されるということになります。なお自社製品を使用する場合には自社による保守点検でなければ安全性を確保できないとの主張が公正競争阻害性の判断の考慮要素になりうるとした裁判例も存在します(大阪高裁平成5年7月30日)。

コメント

 本件でマスクと栄養ドリンクは別個独立の製品であり、新型コロナウィルスの拡大によって重度の品薄状態にある状況で栄養ドリンクと一緒でなければ購入できない場合は客観的に栄養ドリンクの購入が強制されている状況と判断され、抱合せ販売に該当する可能性はあると考えられます。急激に需要が高まっている製品や人気が高い製品に、合理的な理由なく他の製品を合わせる場合は独禁法に違反する可能性があるということです。セット販売は一般的の行われている販売方法と言えますが、他に単独で購入するといった選択肢が無い場合には注意が必要と言えます。自社の製品やサービスに他のものをセットにしている場合は、以上の点を踏まえて独禁法に違反している可能性はないか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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