ウーバーイーツ配達員が団体交渉要求、「労働者」該当性について
2019/12/10 労務法務, 労働法全般

はじめに
飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」が配達員への基本報酬を引き下げたことを受け、配達員でつくる労働組合は団体交渉を求めましたがウーバーイーツ側は拒否していたことがわかりました。配達員は「労働者」には当たらないとしています。今回は労働組合法上の労働者性について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ウーバーイーツの配達員の基本報酬は配達物の「受取料」、注文者への「受け渡し料」、距離に応じた「距離報酬」などで構成されるとされます。今回の報酬改定でそれらのいずれもが引き下げられ、たとえば距離約2.7kmの配達の基本報酬は570円から498円になったとのことです。配達員約20名が加入する労働組合「ウーバーイーツユニオン」は一方的な引き下げだとして団体交渉を求めておりました。
労働者と労働基本権
労働者は憲法28条で団結権、団体交渉権、団体行動権のいわゆる労働基本権が保障されております。そしてそれを受け労働組合法や労働関係調整法でそれらを具体的に規定しております。団結権とは労働組合を自主的に結成する権利です。団体交渉権は労働組合が使用者に対して労働条件の改善等を求め交渉する権利です。そして団体行動権は交渉が決裂した際にストライキ等を行う権利です。一般的には団体交渉権が最も問題となる権利です。
団体交渉と不当労働行為
労働組合法では「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由ながなくて拒むこと」は不当労働行為の一つとして禁止されております(7条2号)。不当労働行為にはこの他に不利益取り扱いや支配介入、経費援助などが規定されております。不当労働行為がなされた場合はそれに対し直ちに罰則が適用されるわけではありませんが、労働委員会の救済命令に違反した場合は50万円以下の過料、取消訴訟で確定した救済命令に違反した場合には1年以下の禁錮または100万円以下の罰金となります(28条)。また別途損害賠償などの請求がなされることもありえます。
労働組合法の労働者
それではどのような場合に労働組合法上の「労働者」に当たるのでしょうか。判例によりますと、①労務提供者が事業組織に組み入れられているか、②契約内容が相手方により一方的・定型的に決定されているか、③業務の依頼に対する諾否の自由の有無、④指揮命令関係の有無、⑤顕著な使用者性の有無などを総合的に考慮して労働者性を判断しているとされます(最判平成23年4月12日)。国立劇場で公演するオペラ歌手や住宅設備機器の補修業務をカスタマーエンジニアが個人事業者ではなく労働者と認められております。労働組合法上の労働者性は労働基準法のそれよりも範囲が広いとされております。
コメント
本件でウーバーイーツ側は配達員は個人事業者であり労働者には該当しないとしています。配達員側がある程度自由に業務を受けることができる点は業務依頼に対する諾否について自由があると言えるかもしれません。しかし報酬体系などはウーバーイーツ側が定型的に決定しているものと考えられることから「労働者」に該当すると判断される可能性もあると言えます。以上のように労働組合法上の労働者は労働基準法よりも広く解されており、会社側が相手を個人事業者として扱っていても裁判所では労働者と判断されることも多いといえます。名目や形式ではなく実質的に報酬や契約内容を会社側が決定していないか、相手側に業務を拒否する自由があるかどうか、指揮命令関係の有無などを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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