衆院通過の会社法改正案で株主提案制限条項削除へ
2019/12/02   商事法務, 会社法

はじめに

 会社法改正案が26日、衆院本会議で可決通過しました。一定の場合に会社側が株主提案を拒否できる条項は野党側の反対により削除されたとのことです。改正案の概要と株主提案権について見直していきます。

株主提案権とは

 一定の要件を満たす株主は株主総会に先立ち議題や議案を提案することができます。まず議決権の1%以上、または300議決権を保有する株主は議題の追加、議案の要領を他の株主に通知することを請求することができます(会社法303条、305条)。なお公開会社は6ヶ月以上の保有期間も要します。また取締役会非設置会社の場合はこれらの要件はなく、株主は単独で提案することができます。議題とは「役員解任の件」や「定款変更の件」といった会議の目的をいいます。議案とは「役員選任の件」などといった議題に対して具体的な候補を挙げる場合をいいます。

拒否できる場合

 議題提案および議案の要項通知請求については株主総会の8週間前までに行う必要があります(303条2項)。この期間を過ぎている場合は拒否することができます。またその議題、議案につき提案をしてきた株主自身が議決権を行使できない場合やその議案が以前にも提案され、議決権の10%以上の賛成を得られずに3年を経過していない場合も拒否することができるとされます。取締役会設置会社の場合は株主総会で決議できる事項は法令または定款に規定されている内容に限定されます。そのため法令、定款に規定されていない事項を含む議題も拒否の対象となります。

改正案の概要

 10月18日に閣議決定され今回の臨時国会に提出された会社法改正案の改正点は①株主総会資料の電子提供、②株主提案権の拒否事由の拡大、③取締役の報酬規制、④役員の賠償保障契約、⑤社外取締役への業務執行委託、⑥社外取締役の設置義務、⑦社債管理、⑧自社株を対価とする公開買付などについて改正点が盛り込まれております。そのなかで株主提案に関しては、提案は株主1人あたり10件までとする制限や他人の名誉を侵害したり侮辱、困惑させるといった乱用的提案を会社が拒否できるとする案が挙げられておりました。しかしこの株主提案に関する改正点は見送られ削除されることとなりました。

コメント

 今回の会社法改正案のうち株主提案に関する拒否事由の拡大については野党側から拒否要件が曖昧で企業側が恣意的に拒否できるのではないか、また株主提案の乱用事例は実際にはほとんど見られないといった指摘を受け見送りとなりました。これにより当面株主提案に関しては従来どおりの扱いとなります。近年海外投資家や個人投資家から株主総会で積極的に問題提起や提案がなされております。株主提案がなされた場合、議決権要件や保有期間要件、提案期間要件、提案内容の適格性など会社側がチェックすべき項目は多いと言えます。また私怨や会社を困惑させるなど正当な株主提案権の行使とは言えない場合は濫用に当たるとした裁判例も存在します(東京地裁平成24年5月28日)。今後の法改正の動向をチェックしつつ以上の点を踏まえて株主総会への対応を準備しておくことが重要と言えるでしょう。

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