経営資源の活用に、法務担当者が果たす役割
2019/09/20   戦略法務, 会社法

1.はじめに

  日本経済新聞によりますと、トヨタ自動車が相手方株式の5%を、スズキが相手方株式の0.2%を取得する形で、両社が緩やかな株式の持ち合いのもとに資本提携をおこなうとの合意がなされました。 両企業が現在の業務提携の状態からより一歩踏み込んだ形で緊密な連携を図ろうとしたことは、自動車産業界が変革期にあることを示していると思われます。すなわち、世界の自動車業界は、自動運転や電気自動車などの次世代技術の革新が目覚ましく、各企業はそれぞれの得意分野や強みを生かす一方で、それ以外の分野は他の企業との連携により、相互の得意分野を活かすという動きに出ていくことが予想されます。
 実際に、トヨタ自動車は、自動車産業以外の異業種とも提携を進めています。日本経済新聞によりますと、トヨタ自動車とPanasonicは電動自動車むけ電池を生産する会社を2020年末までに共同で設立する旨発表しています。また、移動サービスの分野においてはトヨタ自動車とソフトバンクの共同出資会社「MONET」が設立されています。
 これは次世代の自動車技術が、従来の自動車産業以外の分野の技術との連携を必要とする為と考えられます。自動運転においては、自動車の位置情報などの通信技術が必要になりますし、自動運転車の制御を行う上で「目」の役割を果たすセンサーにも高性能が要求されます。 
*参考
ソフトバンクHP「ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社「MONET」、
事業を開始」
                       
    

2.経営資源としての知的財産

 次世代自動車の完成に異業種で培われた技術の導入が必要不可欠になることと同様に、別の業界においても新たなイノベーションを起こす際には、想定していなかった異業種の技術を導入する必要に迫られる場面が生じるものと思われます。
 他社から技術を導入するメリットとして、自社単独で行うよりも開発時間を短縮できる点やノウハウを蓄積できる点などが挙げられます。このようなメリットを得たいと思うのは相手企業も同じです。 そのため、事業提携や共同開発をする場合、どの程度相手企業から技術を引き出すか、その反面、どの程度自社の技術を提供し、提供しないのかといった戦略的判断が必要と考えられます。企業としては自社の技術、とくに知的財産的技術の価値を、経営資源として正確に把握しておくことの必要性が高まっていると思います。
 企業において何が知的財産に当たるかについて明確な基準はないと思われます。知的財産「権」として保護を受ける技術のみならず、それが経営上ライセンス契約による価値を生み出す技術などは知的財産ということができると思います。
 また、弁護士である佐藤義幸氏によりますと、『従前の知財実務は、権利化自体に主眼が置かれ、「質」よりも「量」が重視される傾向があった』とされております。
(西村あさひ法律事務所編 『ビジネスパーソンのための企業法務の教科書』97頁)
 このことから、知的財産「権」として保護はされているものの、経営資源として活用されていない知的財産は数多く眠っていると思われます。
 自社の保有する知的財産が他社にとって魅力的なものであると理解していれば、交渉において有利に働きます。逆に、価値を理解していないと本来よりも低い価値で他企業に知的財産を利用されかねません。
 企業としては、自社の持つ技術が知的財産としていかなる価値を生み出すものであるかを正確に把握するように努めていく必要があります。
 

3.法務知財担当者として注意すべきこと

 前述のように、企業は自社の持つ知的財産的技術の経営資源としての価値を把握する必要があり、その実行を担うのが企業の法務知財担当者の役割です。法務知財担当者としては、当該知的財産が特許法などの保護を受けられるものであるときには知的財産「権」としての保護を受けるための手続きを行っていく等、知的財産の管理に注力する必要があります。
 そのためには、当該知的財産の経営資源としての価値をきちんと把握していることが必要であり、法務知財担当者といえども経営戦略的な立場に基づいて判断するという視点を持つことが求められると思います。
 さらに、知的財産がビジネスの対象となりうるのは、自社の知的財産だけでは有りません。自社が他社の知財技術を利用するという事案においては、他社の知的財産技術に対する適切な評価を行うことができる能力が求められることになると思います。

4.まとめ

 今後の様々な業界における技術イノベーションにおいて、企業が自社および他社の知的財産技術を正確に把握し、その経営資源としての価値を正しく評価したうえで技術提携がなされていくことが望ましいと思います。そのためには、各企業の法務知財担当者が知的財産に対する理解を深めつつ、その技術的価値を経営資源として位置付ける視点を持とうとする努力が必要だと考えます。

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