【改正民法】定型約款に関する規制について
2019/08/16   契約法務, 民法・商法

はじめに

 平成29年(2017年)5月26日に成立した改正民法が令和2年(2020年)4月1日に施行されます。制定以来120年ぶりの大改正により約200項目に及ぶ変更が加えられております。今回はこれまで条文による規定が置かれていなかった定型約款に関する新設規定を見ていきます。

条文新設の経緯

 事業者が不特定多数の相手と契約をする場合には契約約款が使用されることが多いと言えます。保険契約やクレジット契約、銀行取引契約などで利用されてきましたが、近年は宅配や旅行、運送契約などの他、インターネットの普及によりネット通販や動画コンテンツ、各種アプリの販売などあらゆる取引に及んでおります。しかし一般的に約款を詳細に読み込んで契約を締結することは稀であり、後々トラブルに発展することが少なくありません。しかし民法では条文規定が存在せず、一部消費者契約について消費者契約法で規制されていたに留まります。そこで今回の改正で約款に関する規定が新設されることとなりました。

定型約款の効力

(1)定型約款の定義
 改正民法548条の2第1項によりますと、定型約款とは「定形取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」を言うとしています。そして定形取引とは「不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」を言うとしています。そして2項では相手方の権利を制限するか、または義務を加重するもので「取引上の社会通念」に照らして相手方を一方的に害すると認められるものについては合意をしなかったものとみなされます。特定の者が不特定多数の者と画一的な取引を行う場合に該当すると言えます。そのため事業者間取引の契約書の雛形や労働契約書、就業規則などは該当しないと言われております。

(2)定型約款の合意要件
 改正民法548条の2第1項1号、2号によりますと、上記定型約款について①定型約款を契約の内容とする合意をしたとき、または②定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示したときに当事者間で約款の内容である個別の条項それぞれについて合意したものとみなされます。①は組入合意と言います。そして個別に合意しなくても表示するだけでも①と同様に合意したことになります。

定型約款の変更

 定型約款は事後、その内容を変更することもできます(548条の4)。その要件は①変更が相手方の一般の利益に適合するとき、または②変更が契約の目的に反せず、変更の必要性・相当性など諸般の事情に照らして合理的である場合は変更後の条項についても合意があったものとみなされます。そして変更の効力発生時期を定め、インターネットなど適切な方法で周知する必要があります(同2項、3項)。契約締結時の定型約款は相手方に一方的に不利な内容でなければ有効ですが、その後の変更については要件がより厳格なものとなっております。

コメント

 以上のように改正民法では定型約款についての規定が新設され、約款について合意がなされた場合だけでなく表示した場合も有効と規定されました。インターネットでの約款に「同意します」ボタンのクリックもこれらに該当すると言えます。表示だけでもみなし合意が働くことから定型約款を使用した契約の場合には契約書に「本契約には定型約款が適用されます」といった文言を盛り込むなど契約書の雛形も見直す必要があると言えます。約款の内容については消費者契約法での規制と同様に相手方に一方的に不利になるものは効力が認められませんが、取引通念上の合理性があれば事後の変更も可能となっております。約款を使用した取引を行っている場合には以上を踏まえて約款の内容や契約書を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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