京アニ事件で労働局が対応準備、労災認定基準について
2019/08/06   労務法務, 労働法全般

はじめに

 京都労働局長は先月30日の定例会見で、アニメ制作会社「京都アニメーション」の放火殺人事件で亡くなられた従業員が労災の対象となる可能性が高いとして調査に着手したと発表しました。本人や遺族からの請求があれば迅速に対応するとしています。今回は労災認定の要件について見ていきます。

事件の概要

 報道などによりますと、7月18日の午前10時半ごろ、京都アニメーション第一スタジオに男(41)が侵入しガソリンを建物の1階にかけライターで着火したとされます。それにより爆発、火災が生じ当時現地で作業をしていた従業員74名のうち33名が死亡し35名が病院に搬送され、その後さらに2名が亡くなったとのことです。死因は4名が一酸化炭素中毒、2名が窒息、それ以外は焼死と言われております。京都市消防局は建物の防火対策は適切だったとしています。

労災保険制度とは

 労災保険とは雇用保険と並んで事業者に加入が義務付けられている労働保険の一種です。労働者が安心して働けるように各種保険給付を行う制度と言えます。就業中の負傷や疾病、死亡などの際に療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などが支給されることとなります。それではどのような場合に「労災」と認定されるのでしょうか。以下具体的に見ていきます。

労災認定基準

(1)業務遂行性
 労災認定の要件としてはまず業務遂行性が挙げられます。業務遂行性とは労働者が労働契約に基づいて事業者の支配下にある状態であったかということです。事業場内で仕事をしている場合だけでなく、事業場内で休憩している場合も同様に支配下にあるとされております。また事業場外で運送や配達などの業務を行っている場合や出張中も同様に認められます。

(2)業務起因性
 そしてもう一つの基準として業務起因性があります。これは怪我や疾病と業務との間に相当因果関係があることを言います。事業場内で業務中に負傷したとしても、それが他の従業員との私的な喧嘩による場合や、業務とは関係がない自然災害などの偶発的な事故による場合は原則として業務起因性が無く労災認定はされないと言われております。しかしそのような場合でも、その業務に内在する危険が具体化して発生した事故と言える場合には業務起因性が認められる場合があります。たとえば鉄塔や電線といった自然災害を受けやすい場所での業務といった場合には認められる可能性が出てきます。また休憩時間中でも業務との関連性や事業主の関与の程度、拘束性などを考慮して業務起因性が認められる場合があります。

コメント

 本件で被害にあった京都アニメーションの従業員は第一スタジオ内で業務を行っていたため業務遂行性は認められるものと思われます。しかし被災の原因が第三者による異常な行為であるため業務起因性が認められるかがポイントになると考えられます。一部過激なファンなどによる嫌がらせや脅迫まがいの行為もあったとされており、業務に内在する危険が具体化したと言えるかが調査されていくのではないでしょうか。このように労災認定がされるかどうかは事案によってかなり微妙な判断を要します。会社側は労災には当たらないと判断しても労基署では労災認定する場合もあります。労災を認める認めないの紛争から、損害賠償などの民事事件に発展する例も多いと言えます。従業員の怪我や疾病が労災に当たるか判断しにくい場合には独自に判断せず、労基署の労災課などの専門家に相談することが重要と言えるでしょう。

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