九電工幹部に有罪判決、談合の刑事責任について
2019/07/09 コンプライアンス, 会社法

はじめに
福岡県のし尿処理施設建設を巡る談合事件で8日、福岡地裁小倉支部は九電工幹部3人と水関連プラント会社「フソウ」の社員1人に有罪判決を言い渡しました。それぞれ執行猶予付きで懲役10月~懲役1年2月とのことです。今回は入札談合にともなう刑事責任のリスクについて見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、福岡県築上町が発注した約8億円のし尿処理施設建設の入札をめぐり、福岡県警は今年3月に同町環境課長の長部容疑者(54)を官製談合防止法違反の疑いで逮捕しました。捜査の過程で九電工側が確実に落札できるよう、同社を上回る額で入札するようフソウ側に依頼し見返りに子会社を通じてフソウの機械1千万円分を発注する協定を結んでいたとのことです。
入札談合とは
国や自治体が発注する公共工事で、入札業者らが予め話し合いで落札者を決め、他の業者はその業者が落札できるようより高い値段で入札する行為を入札談合と呼びます。これにより業者間で競争が行われないことから通常よりも高い落札額で落札することができます。入札談合は独禁法や官製談合防止法、刑法などで規制されております。以下官製談合防止法と刑法を中心に見ていきます。
刑法の談合罪
刑法96条の6によりますと、公の競売、入札において、公正な価格を害する目的または不正の利益を得る目的で談合した場合、3年以下の懲役、250万円以下の罰金またはこれらの併科となります。ここにいう公正な価格とは自由な競争が行われていれば形成されたであろう価格を言うとされます(最判昭和28年12月10日)。この公正な価格を害する、あるいは不正な利益を得る目的が必要で、単に話し合っただけでは談合罪には当たらないと言われております。
官製談合防止法による規制
官製談合防止法8条によりますと、自治体等の職員が競争入札に際し、事業者に談合をそそのかしたり、予定価格や入札等に関する秘密を教示するなどして競争入札の公正を害する行為を行った場合には5年以下の懲役または250万円以下の罰金が科されるとされています。官製談合防止法違反の対象は自治体の職員等の公務員となっておりますが、これらの者に働きかけるなどして違反行為を行わせた場合には業者側も共犯となりうるといわれております。
コメント
本件で起訴された九電工幹部ら3人は九電工が落札するかわりに1000万円をフソウ側に利益供与する旨持ちかけ談合したとされます。また築上町環境課長は九電工が有利になるよう入札参加条件を厳しくし、最終的に九電工とフソウのみが入札に参加したとのことです。同課長と九電工の営業所長は官製談合防止法違反と贈賄罪で公判中です。以上のように入札談合では各種法律によって厳しい罰則が設けられております。また独禁法の不当な取引制限にも該当する可能性があり相当高額な課徴金が課されることもあります。公共工事等に入札を検討している場合には、営業担当者等が他の業者と話し合っていないか、また自治体の職員などと接触していないかを確認し、違反にあたらないよう周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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