イッセイ ミヤケが差止請求、類似品対策について
2019/06/18 コンプライアンス, 不正競争防止法
はじめに
「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」はバッグの製造販売を行う「バルコス」(鳥取県)が同社が販売するバッグと類似するバッグを販売しているとして東京地裁に差止めを求める仮処分申し立てを行っていたことがわかりました。立体的な外観が類似しているとのことです。今回は類似商品対策について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、イッセイ ミヤケが製造販売する「BAOBAO」ブランドのバッグは物を入れるとタイルのようなピースが立体的に変形する特徴を持っているとされます。一方のバルコスが製造販売する「ARIES NEO」ブランドのバッグも同様にタイルのようなピースが立体的に変形する外観を持っているとのことです。両社は2月から協議を行っていたものの解決には至らず、イッセイ ミヤケ側が不正競争防止法違反を理由として販売差止の仮処分申し立てを行いました。
不正競争防止法による規制
不正競争防止法2条1項によりますと、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一、または類似す商品等表示を使用し、他人の商品、営業と混同を生じさせる行為を不正競争行為の一種として禁止しております。商品等表示としては商号や氏名だけでなく見た目や形態、営業方法そのもの等多岐にわたります。そして販売期間や地域、シェアなどから需要者に広く周知されているものと類似するものを使用することが規制されます。差止請求や賠償請求ができる他(3条、4条)、罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科となります(21条2項1号)。ただし本法による保護が受けられるのは販売開始から3年間となります(19条1項5号イ)。
商標法による保護
以前にも取り上げましたが、特許庁に登録することによって商標権として保護を受けることも可能です。商標権は登録の日から10年間存続し(商標法19条1項)、侵害に対しては差止請求(36条1項)、賠償請求(37条)ができ、また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(78条)。
意匠法による保護
自社製品の保護としては商標以外にも、その形状や模様、色彩といったデザインや外観を「意匠」として保護を受けることも可能です。意匠権は登録の日から20年間存続し、違反に対してはやはり差止請求(意匠法37条)、賠償請求(39条等)ができ、また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となります(69条)。存続期間は商標権よりも10年長くなっております。
コメント
本件で両社のバッグが類似すると判断されるかは現段階ではわかりませんが、イッセイ ミヤケは同社「BAOBAO」ブランドの製品を商標登録や意匠登録していなかったことから不正競争防止法による差止め請求にでたものと考えられます。上記のように不正競争防止法による保護を求める場合は期間制限が3年以内という制限があり、また商品表示の周知性などを原告側が立証していく必要があります。それに対し商標登録や意匠登録がある場合は10年ないし20年という長期間にわたって全国的に一括して保護される上に立証も容易です。その反面登録に際しては新規性などの証明が必要となりそれなりのハードルとなります。このように自社製品を類似品から保護する方法はいくつか用意されております。コストや難易度などを考慮した上で最もふさわしい方策を検討していくことが重要と言えるでしょう。
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