企業による従業員のSNS管理について
2018/11/21 コンプライアンス, 労働法全般

1.はじめに
現代では、SNSは個人だけでなく企業にとっても宣伝効果が大きく、広く活用されるようになっています。しかしながら、SNSは、企業にとって、従業員が個人アカウントを使用し、ノウハウや情報を漏洩してしまう、または企業に不利益な発言等をしてしまうといったリスクも大いにあります。そこで、企業はこのような問題を防ぐために、業務命令によって従業員個人のSNSアカウントの提出を義務付けたりなどの管理を行うことはできるのでしょうか。そこにどのような法的問題が存在するのか、以下、見ていきたいと思います。
2.業務命令による制限
(1)業務命令の定義とその限界
使用者が、労働契約に基づいて、業務遂行のために従業員に対して行う指示や命令のことをいいます。労働契約に基づいていると考えられることから、その範囲は、労働契約によって処分を許された範囲となります。しかしながら、労働契約にあるからと言ってどんな命令でも許されるのではなく、合理性のある命令でなくてはならないと考えられます(最決昭和61年3月13日)。
(2)評価
たとその個人のSNSで企業についての投稿があったとしても、個人的な内容も含まれているので、会社が個人のSNSアカウントを管理するということは、プライベートに会社が介入するということになり、公私混同と評価されうると考えられます。そうであるので、業務上の合理性が認められず、違法な業務命令と評価される恐れがあると思われます。
3 .対策
企業の個人SNSを会社が完全に管理することは、上述の通り難しいものであるといえます。しかしながら、企業は合理的な業務命令ならば行うことができるので、企業のリスクと従業員に対する業務命令の合理性のバランスをとって必要な制限を課すことは可能です。具体的には、業務命令によって、企業のノウハウや秘密をSNS上に載せない、企業の役員や従業員の個人情報を載せない、企業イメージを低下させるような発言・写真を投稿しないなどの規制を、就業規則に記載することが考えられます。このとき、抑止力を高めるために懲戒処分や、企業に損害を与えた場合の損害賠償規定も設けておく必要があると思われます。さらに、どこまでの投稿が許されるかなどのガイドラインの設定や、従業員等に対し、誓約書を書いてもらうなどの対策も考えられます。このようにすることで、企業は個人SNSによるデメリットを回避することが可能になると考えられます。
4.コメント
上記にあるような具体例は一見してどれもわざわざ就業規則に記載し、業務命令とするほどでもない、当たり前のものであるように感じられます。しかし、SNSによって誰でも簡単に情報を発信できる現代社会において、ネットリテラシーを徹底することは必須であるし、どんなに対策しても対策しすぎるということはないものであると思われます。企業の法務部員は、個人SNSによるリスクは本社従業員だけにかかわる問題でもないことを考慮し、社内コンプライアンスの問題として、従業員だけでなく、企業に関わるアルバイトや派遣社員、子会社の社員に対しても、定期的に説明会を開くなどし、周知を促したりする必要があると考えられます。
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