福岡労働局が「河合塾」指摘、無期転換ルールについて
2018/10/24   労務法務, 労働法全般

はじめに

 毎日新聞は24日付けで、大手予備校「河合塾」の非正規講師が無期転換ルール適用直前になって雇い止めになったことについて福岡労働局が「無効の可能性がある」と文書で指摘していた旨報じました。雇い止めの無効の可能性を指摘したのは異例と言えます。今回は無期転換ルールと雇い止め法理を見直します。

事案の概要

 報道などによりますと、今回雇い止めとなった佐賀県の松永義郎さん(68)は1989年から29年間講師として河合塾で働いてきたとされます。近年は1年契約を更新する形で福岡校や北九州校で働き、6回契約を更新しているとのことです。河合塾側の雇い止めの理由は前年からの注意・指導にもかかわらず授業アンケートの結果が改善されていなかったこととされます。一方松永さんはこれまで特に指導などは無く、無期転換逃れが目的であるとしています。

無期転換ルール

 これまでにも取り上げた改正労働契約法の無期転換ルールをおさらいします。改正労働契約法18条によりますと、有期労働契約の通算契約期間が5年を超えるようになる場合、当該契約期間の初日から労働者は無期転換の申し込みをすることができるようになります。1年契約なら5回目の更新のときから、3年契約なら1回目の更新のときから申し込みができるということです。この無期転換の申し込みがなされますと会社側は無期労働契約の申し込みを承諾したものとみなされ、拒否することはできません。ただし途中で6ヶ月以上の空白がある場合はそこで通算契約期間は一旦リセットされます。そしてこの無期転換ルールは2013年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象となります。

雇い止め制限の法理

 有期労働契約は会社が契約を更新しなければそこで終了します。これを雇い止めと言いますが、有期契約でも自由に無制限に雇い止めができるわけではありません。従来最高裁判例により雇い止めには一定の制限がなされてきました。まず有期契約が反復継続され「実質的に期間の定めのない契約と変わりがない」場合には正規雇用の解雇の規定が類推適用されるというものです(最判昭和49年7月22日)。そして契約更新の管理が厳格になされ、実質的に期間の定めのない契約と同視できなくても、「雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合」には解雇権濫用法理から、雇い止めにも合理的理由が必要とされました(最判昭和61年12月4日)。

改正労働契約法による明文化

 改正労働契約法19条では、有期契約が反復更新され、雇い止めが正規労働者の解雇と社会通念上同視できる場合、または更新されるこものと期待することに合理的理由があると認められる場合には、雇い止めは「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合は従前の契約内容で更新の承諾をしたものとみなされます。つまり雇い止めには合理性と社会通念上の相当性が必要となり、ほぼこれまでの判例法理が明文化されたことになります。

コメント

 本件で福岡労働局は松永さんの雇い止めについて「社会通念上相当かは疑問」とし、また「無期転換ルールを意図的に避ける目的で雇い止めをすることは、法の趣旨に照らし望ましくない」と指摘したとのことです。松永さんはこれまで29年間講師として働いてきており、契約が更新されるものと期待することに合理的な理由があると認められると言えます。雇い止めには合理性と社会通念上の相当性が必要ですが、無期転換回避には合理性と相当性は認めらないと判断されたと考えられます。労働局の指摘には法的拘束力はありませんが、今後裁判所でも同様の判決がでる可能性は高いと言えます。近年無期転換を前にして多数の雇い止めが行われておりますが、他に合理的で相当な理由がない場合は問題化する可能性があります。有期労働者を多く雇用している場合は慎重に対応することが重要と言えるでしょう。

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