勤務時間全面禁煙について
2018/10/15   労務法務, 労働法全般

1.はじめに
 今回は、昨今話題となっている勤務内の喫煙禁止について考えてみたいと思います。
 企業としては、勤務時間中にどこまで喫煙禁止を求めることができるのかを見ていきたいと思います。  
2.勤務中の喫煙禁止
 会社としては、社員の健康推進や社員間のトラブル防止のために就業規則において勤務中の喫煙を禁止することができます。
 喫煙することは、憲法13条が定める幸福追求権に含まれ、これと抵触するとも考えられます。しかし、過去の判例は、「喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の一つに含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならいものではない。」としています(最高裁判所大法廷昭和45年9月16日判決)。
 つまり、会社が上記のように定める規則による場合、喫煙を一定程度制限できることもあります。
3.休憩中の喫煙禁止
  では、休憩中も喫煙を禁止することはできるのでしょうか。
 労働基準法34条3項には「使用者は・・・休憩時間を自由に利用させなければならない」と定めております。そして、この休憩時間は、労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければならないとされています。このことからすると、原則、休憩時間は勤務中とは言えないため、喫煙を禁止させるということまでは難しいといえるでしょう。しかし、休憩時間であってもオフィス内において喫煙を禁止する措置をすることは例外的に社員の健康推進のためといえるので可能といえます。
4.法務部として対応
 喫煙行為は、息抜きで行われるとともに、コミュニケーションの一つとして行われる場合も少なくないと思われます。
 仮に、就業規則を変更する場合、「労働者の受ける不利益の程度」「労働条件の変更の必要性」「変更後の就業規則の内容の相当性」「労働組合等との交渉の状況」等の事情に照らして合理的でなければなりません(労働契約法10条本文)。
 この点、判例は、合理性の有無の具体的な判断要素として「就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の 就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経過、他の労働組合または他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。」としました。
 この判例は、賃金に関する就業規則の変更事例ではあるものの、法務担当者としては、喫煙禁止の規則を定めるにあたっては、このような判断枠組みを意識して定める必要があると思われます。
新着情報
- 業務効率化
 - クラウドリーガル公式資料ダウンロード
 
- 弁護士
 
- 原内 直哉弁護士
 - インテンス法律事務所
 - 〒162-0814
東京都新宿区新小川町4番7号アオヤギビル3階 
- 弁護士
 - 境 孝也弁護士
 - さかい総合法律事務所
 - 〒105-0004
東京都港区新橋3-9-10 天翔新橋ビル6階 
- セミナー
 
森田 芳玄 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/東京弁護士会所属)
- 【オンライン】IPOを見据えた内部調査・第三者委員会活用のポイント
 - 終了
 - 2025/05/21
 - 12:00~12:45
 
- まとめ
 - 中国「データ越境移転促進・規範化規定」解説2024.4.23
 - 中国の現行法令上, 香港・マカオ・台湾を除く中国本土内(「境内」)から境外への個人情報等の移転...
 
- ニュース
 - 東京地裁が「ちゃん付け」で認定、セクハラについて2025.10.27
 - 名前を「ちゃん付け」で呼ばれるなどして精神的苦痛を受けたとして、佐川急便に勤めていた女性が元同...
 
- 業務効率化
 - ContractS CLM公式資料ダウンロード
 
- 解説動画
 
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
 - 終了
 - 視聴時間1時間15分
 
- 解説動画
 
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
 - 終了
 - 視聴時間1時間27分
 











