大王製紙への賠償請求を棄却、新株予約権の有利発行について
2018/09/26   商事法務, 会社法

はじめに

 新株予約権付社債の発行により株価が下落して損害を受けたとして、大王製紙の経営陣に対し、筆頭株主である北越コーポレーションが損害の賠償を求めていた訴訟で20日、東京地裁は請求を棄却していたことがわかりました。今回は新株予約権の有利発行規制について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、大王製紙は2015年9月に紙おむつ生産設備増強のための資金調達を目的として300億円分の新株予約権付社債を発行しました。同社の筆頭株主である北越紀州製紙(現北越コーポレーション)は、それにより株価が下落するなどして既存株主が損害を受けたとして大王製紙の経営陣らを相手取り損害賠償を求め提訴していたとされます。北越側は株主総会の特別決議を経ていない違法な有利発行であり、また北越の議決権比率を下げることを目的とした不公正なものである旨主張していたとのことです。

新株予約権とは

 新株予約権とは、それを行使することにより予め定められた価額で会社の株式を取得することができる権利を言います。発行自体は有償でも無償で可能ですが、予約権行使の際は有償となります。例えば発行時の対価を2万円とし、行使時の払込金額を3万円として発行した場合、株価が15万円の時点で行使すると新株予約権者は5万円の利益を得ることとなります。逆に権利行使期間中に結局行使されなかった場合は、発行時の対価2万円は会社の利益となります。新株予約権はインセンティブ報酬としてのストックオプションや敵対的買収防衛策としても使用されます。

新株予約権の発行手続

 公開会社が第三者割当で発行する場合は募集事項の決定を取締役会で行うことになります(会社法240条1項)。しかし有利発行である場合はその必要性を説明した上で株主総会の特別決議を要します(238条2項、309条2項5号)。株主割当の場合も同様に取締役会で決定します(241条3項3号)。次に非公開会社が募集する場合は株主割当、第三者割当、また通常発行、有利発行問わず原則として株主総会の特別決議を要します(238条2項、309条2項6号、241条3項4号等)。例外として定款で定めることにより取締役または取締役会によることも可能です(241条3項1号、2号)。基本的に募集株式発行と同様です。

有利発行とは

 上記のとおり有利発行を行う場合は株主総会の特別決議によることになります。有利発行とは、公正な払込金額よりも特に低い価額による発行をいいますが、具体的には「現在の株価、権利行使価額、行使期間、金利、株価変動等の要素をもとに、オプション評価理論に基づき算出された、新株予約権発行時点における価額(公正な払込金額)」よりも低い場合をいいます(東京地裁平成19年11月12日)。オプション評価理論は非常に複雑な算定方法を使用しますので、専門の第三者機関に算定してもらうことが一般的です。

コメント

 本件で東京地裁は、発行価格について「客観的資料に基づく、一応合理的な算定方法で決められた」ものであるとして有利発行には当たらないとしました。また発行目的も議決権比率を下げることを主たる目的としたものではないと認定しました。以上のように新株予約権の公正価格の算定は募集株式発行の場合に比べて非常に複雑です。後々の紛争の原因となることを防ぐためにも価格算定は専門機関に依頼することが無難と考えられます。また発行の主たる目的が特定の株主の議決権比率を低下させ、経営陣の支配権を維持することと認定された場合には発行差止請求がなされる場合があります。新株予約権を発行する際には、手続だけでなくその目的や発行価格についても注意を払うことが重要と言えるでしょう。

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