元エステ店従業員が申し立て、労働審判の対応について
2018/08/30   労務法務, 労働法全般

はじめに

首都圏でエステ店を運営する「スイート・ピア」(渋谷区)の元従業員の20代女性2人が20日、未払い残業代などの支払いを求め東京地裁に労働審判申し立てを行っていたことがわかりました。月の時間外労働は80時間に及ぶとのことです。今回は労働審判申し立てがなされば場合の対応について見ていきます。

事案の概要

労働組合「エステ・ユニオン」の発表によりますと、大手フィットネスクラブ内でエステティックサロンを展開する「スイート・ピア」では長時間の時間外労働があったにもかかわらず、基本給16万円、技術手当3万円、達成手当3万円のみで残業代は一切支払われていなかったされます。スイート・ピア側は技術手当・達成手当が固定残業代に該当すると主張しているとのことです。昨年以降従業員側は団体交渉、民事調停などで支払いを求めてきましたが解決にはいたらず労働審判申し立てを行ったとされております。

労働審判とは

労働審判とは、労使間の紛争に対し裁判官と労働審判員によって解決案のあっせんし労働紛争の解決を図る制度を言います(労働審判法1条)。司法制度改革の一環として導入され2006年4月から運用が開始された訴訟よりも簡易迅速なADRの一種で近年利用件数も増加しております。審判対象は個別労働関係紛争で、具体的にはハラスメント、賃金紛争、解雇無効、労働災害などが当たります。

労働審判の流れ

労働審判が申し立てられた場合、裁判官の中から労働審判官が指定され、さらに2人の労働審判員が指定されます(8条、10条)。第一回審判手続きの期日は申し立てから40日以内に指定され、原則として3回で審理は終了します(15条2項)。審理は非公開で行われ、裁判官を含めた労働委員会3人の過半数によって決議がなされます(12条)。そこではまず話し合いでの解決が試みられ、功を奏さなかった場合に労働審判を行います(20条1項)。労働審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができ(21条1項)、申し立てがなければ裁判上の和解と同一の効果を有することになります(同4項)。異議申し立てがなされますと労働審判は効力を失い(同3項)、訴えの提起があったものと擬制され、通常訴訟に移行することになります(22条1項)。

個別労働紛争解決制度

労働審判制度に似た制度として個別労働紛争解決制度があります。これには都道府県労働局による相談、助言・指導、あっせんがあります。労働局の総合相談コーナーでの相談や情報提供から助言・指導へと進み、解決しなかった場合にあっせんへと移行します。あっせん手続きでは紛争調整委員会に双方の事情が聴取され、話し合いを促進し、最終的に具体的なあっせん案が提示されます。双方が合意すればそこで解決ですが合意に至らなければ他の紛争解決方法に進むこととなり、労働審判や訴訟に移行します。

コメント

本件では今月20日に東京地裁に労働審判が申し立てられております。そこから40日以内に裁判所より期日指定がなされ、呼出状が届きます。スイート・ピア側はその期日の数日前の指定された日までに答弁書を提出することになります。審理は原則3回行われ、おおよそ2ヶ月程度で終了するものと思われます。異議を申し立てず審判が確定した場合、裁判上の和解と同様の効果を生じます。これは判決と同様に法的拘束力があり、その後撤回することはできません。以上のように労働審判は裁判官を入れて裁判所で行われる制度で、「あっせん」よりも紛争解決の実効性は高いものと言えます。最終的には自動的に訴訟に移行することから、労働審判が申し立てられた場合は訴訟と同様に綿密な準備が必要です。また逆に会社側から労働審判申し立てを行うこともできます。従業員と労働紛争が生じた場合は積極的に利用していくことも重要と言えるでしょう。

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