元契約社員がバンダイを提訴、雇い止めの有効性について
2018/08/23   労務法務, 労働法全般

はじめに

玩具メーカー大手「バンダイ」(東京都)の元契約社員の男性が、無期転換直前に雇い止めを行ったのは不当であるとして従業員としての地位の確認を求めていた訴訟の第1回口頭弁論が20日行われました。バンダイ側は争う姿勢です。今回は有期雇用の雇い止めの有効性について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、原告の男性は2006年5月からバンダイの有期雇用契約社員として働いておりました。男性が無期転換を希望する旨上司に伝えたところバンダイ側は今年3月31日で契約を終了すると通告したとのことです。終了理由は男性の業務の減少とされます。男性は2006年の雇用開始から1年契約の更新を繰り返し今年で雇用期間は12年目になるとのことです。男性側は無期雇用への転換回避を目的とする不合理な雇い止めであるとして提訴しました。

契約社員の無期雇用転換ルールとは

2013年の労働契約法改正により有期契約の労働者の雇用期間が通算5年を超えた場合、労働者の希望により無期雇用に転換されることとなりました(18条)。1年契約や2年契約といった有期雇用を更新することによって通算契約期間が5年を超え、現在の契約期間満了までに労働者が無期転換を申し込んだときは、使用者は承諾したものとみなされ、自動的に無期雇用となります。本規定が適用される2013年4月1日から5年が経過する今年4月に最初の無期転換者が現れたことになります。

雇い止めの適法性

有期雇用の従業員の雇用を期間満了などにより打ち切ることを雇い止めと言います。この雇い止め自体は本来違法なものではありません。必要なときに必要な期間だけ雇用するという有期契約の本質からすれば当然のものとも言えます。しかし更新を反復していた場合や、更新を期待する合理的理由がある場合は、更新拒絶するにつき客観的な合理性と社会通念上の相当性が必要とされます(19条)。また裁判例でも雇い止めを違法・無効とする場合があります。厚労省の発表では4つの類型に分けております。

裁判例上問題となる類型

(1)純粋有期契約型
業務の内容や契約の性質などから期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性が認められない形態を純粋有期契約型とされます。この場合は労働者側も期間満了で終了することを納得しており、前例として雇い止めが行われているであろうことから、雇い止めは有効と判断されやすいとされます。

(2)実質無期契約型
業務の内容や契約上の地位、更新状況、他の労働者との比較から期間の定めのなに契約と実質的に異ならない状態に至っていると認められるものを実質無期契約型と呼ばれます。この場合には労働者も更新されるであろうことを期待しており、前例として雇い止めが多く行われているという状況もないことから裁判所も雇い止めを違法・無効と判断する可能性が高いと言えます。

(3)反復更新型
業務内容は無期契約社員と異なっているが、更新を反復している場合を反復更新型と言います。この場合は過去に同様の地位を有する有期契約の労働者が雇い止めされているという前例もある場合です。裁判例では雇い止めを有効とする事例も見られます。

(4)継続特約型
雇用継続への合理的期待が当初の契約締結時から生じているの認められる契約類型を継続特約型と言います。この類型の場合も雇い止めを無効とする事例が見られます。

コメント

本件でバンダイ側は原告男性を雇い止めにした理由を男性の業務が減少したこととしています。業務の減少自体は理由として合理的とも考えられますが、男性の雇用期間や業務内容等から実質無期契約型の有期雇用と見られた場合、裁判所は無効と判断する可能性もあると考えられます。また昨今急激に増加していると言われる無期転換回避を実質的な理由と判断された場合も労働契約法の趣旨に反し、合理性と相当性を欠くと判断される可能性もあるのではないかと思われます。この点に関しては現段階では多くの訴訟が係属しておりますが裁判所の判断はまだ出ておらず今後の動向を注視していく必要があります。有期雇用を行う際には、期間満了で更新せず雇い止めもある点を契約段階で明示し、雇い止めの30日前までに通告する必要があります。また無期転換する場合には、無期転換された労働者用の就業規則が必要となってきます。以上を踏まえて、有期契約社員の労務状況を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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