「予約の無断キャンセル」、法的対応の可否について
2018/07/13 民法・商法

はじめに
日経新聞電子版は11日、全国の飲食業者が加盟する業界団体が予約の「無断キャンセル」への対応の自主ルール作成に乗り出した旨報じております。飲食店に多大な被害を生じさせる、いわゆる予約のドタキャン。今回はこうした予約の無断キャンセルに対して法的にはどのような対応が可能かを見ていきます。
事案の背景
日経新聞によりますと、2013年~2017年までの約2200万件の予約データを調査したところ、そのうちの1%程度は無断キャンセルされていることのことです。インターネットで手軽に予約ができるようになった昨今、それにともなって無断キャンセルも増加しているとされます。飲食店で無断キャンセルがなされると食材や料理、それに掛る従業員の手間、その予約のために断った他の予約分などが無駄となります。経産省の試算では無断キャンセルにより年間約2000億円の損失が発生しているものと言われており、無断キャンセルの防止と被害回復の方策が急務となっております。以下法的救済の可能性を見ていきます。
債務不履行としての請求
予約の無断キャンセルによって生じた損害の回復方法としてはまず債務不履行に基づく賠償請求が考えられます。「債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき」に賠償請求ができます(民法415条)。口頭の予約であっても店舗と客との間で「契約」は成立します。これにより互いに店舗でのサービス提供とそれに対する代金の支払い義務が生じます。問題はその契約の成立を店舗側が立証する必要があるということです。予約サイトによる場合はネット上に履歴が残ることから証明はしやすいと言えます。しかし電話予約の場合は録音などを行わない限り証明は難しいと言えるでしょう。
損害額の算定
損害の賠償請求する場合、実際に生じた損害の額と因果関係などを立証する必要があります。飲食店での予約キャンセルで生じる損害の例としては、予約のために用意し無駄になった食事・食材分が考えられます。そして従業員の人件費や予約によって断った他の顧客からの利益分も考えられます。しかしこれらを実際に算定して請求することは簡単ではありません。たとえば用意した料理は他の客に提供できなかったか、従業員は予約がなくても他の仕事があったのではないか、予約があったとしても他の予約を受け入れる余裕があったのではないか等、損害発生を否定する要素も考慮する必要があるということです。
不法行為としての請求
債務不履行による請求は上記のように、契約関係から生じる義務の不履行がなければ請求できません。そこで不法行為に基づいて請求することも考えられます。「故意又は過失によって」権利、利益を侵害された場合に請求できます(709条)。無断キャンセルによって大量の食材を廃棄した、多数の空席を店舗に生じさせ雰囲気を害した、従業員の士気低下させ精神的な損害を被ったなども損害として成り立ち得ます。しかしやはりそれらの算定と立証は簡単ではないと言えます。
コメント
以上のように予約の無断キャンセルに対しては法的に損害賠償を請求することは不可能ではありません。しかし実際にはほとんど行われていないのが現状と言えます。コストに見合わず、またそこまでの強硬手段に出ることによるイメージの低下も懸念されるからです。そこで予約時にキャンセル料(1席1万円)を取る旨提示し連絡先の確認を徹底するといった対策を講じる店舗も存在するとされます。これも有効な手段と言えますがキャンセル料の設定に関して「事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」場合は無効となるので注意が必要です(消費者契約法9条1項)。そういった意味でも業界団体による自主ルールは実効性のある手段と考えられます。大口の予約を受ける際には、こういった団体の動きに留意しつつ、契約の存在と相手方の確認を徹底していくことが重要と言えるでしょう。
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