事例から考える、フランチャイズ・システムと優越的地位の濫用該当の可能性
2018/06/19   フランチャイズ, 独占禁止法

1 はじめに

 本記事では、独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当する場面について、近年のフランチャイズ・システムに関する大手コンビニチェーン店の事例を中心に見ていこうと思います。

2 フランチャイズ・システムとは

 フランチャイズ・システムとは、一般的には、本部(フランチャイザー)が加盟者(加盟店、フランチャイジー)に対して、特定の商標等を使用する権利を与え、また加盟者の物品販売等の事業・経営について、統一的な方法で統制等を行い、これらの対価として加盟者等が本部に金銭を支払う事業形態であると考えられています。近年、このような事業形態を用いる事業者は増加傾向にあります(注1)。

3 優越的地位の濫用とは

 優越的地位の濫用とは、独占禁止法(以下、法令名を省略します。)2条9項5号規定の類型です。法律上・事実上取引相手に優越した地位にある者が、その地位に乗じて自身に有利な取引内容とする場合などをいうと考えられています。なお、優越した地位は取引当事者間の相対的なもので足りると考えられています。

4 優越的地位の濫用に該当し得る場合の考え方

(1)判断要素
 優越的地位の濫用に該当する場合の判断方法は、以下の諸事情の総合考慮をすると考えられています。
(ア)加盟者の本部に対する取引依存度
(本部による経営指導等への依存度、商品及び原材料等の本部又は本部推奨先からの仕入割合等)
(イ)本部の市場における地位
(ウ)加盟者の取引先の変更可能性
(初期投資の額、中途解約権の有無及びその内容、違約金の有無及びその金額、契約期間等)、
(エ)本部及び加盟者間の事業規模の格差等

(2)具体例
ア 見切り販売の制限
 見切り販売の制限とは、本部が加盟店に対し、加盟店の取り扱う商品のうち、品質の低下が早い商品について値引きを制限する場合で、売れ残りとして廃棄せざるを得ない状況にすることなどをいうと考えられています。
例えば、おにぎりやお弁当などその日中に賞味期限が切れる商品を値引きすることを制限する場合が考えられます。
 下記事例のように、加盟店が本部とのフランチャイズ契約関係の継続を求めるにもかかわらず、本部が加盟店に優位する力関係を背景に、事実上、値引きの制限を強制する場合にも該当し得ると考えられています。

イ フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更
 フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更とは、フランチャイズ契約締結時に予測し得ない負担を加盟店が負うにもかかわらず、本部が事業変更を行い、これを(事実上)強制する場合をいうと考えられています。

ウ 契約終了後の競業禁止
 契約終了後の競業禁止とは、本部が加盟者に対して、特定地域で成立している本部の商権の維持、本部が加盟者に対して供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域、期間又は内容の競業禁止義務を課すことをいうと考えられています。

5 大手コンビニチェーン店の事例(最高裁判所第三小法廷平成26年10月14日)

(1)事例
 大手コンビニチェーン店本部が行っていたフランチャイズ・システムを用いた事業上の契約において、原告の加盟店が、被告の本部に対し、被告が行った見切り販売を制限する行為について優越的地位の濫用の該当性の有無を判示した事例です。原告は、当該制限行為が優越的地位の濫用に該当し25条上の違法性を構成すると主張しました。

(2)判旨
 前記平成26年判決の前審にあたる東京高裁平成25年8月30日判決は、見切り販売の対象となった商品について、推奨価格を維持することを助言指導するにとどまる限りは、優越的地位の濫用に該当せず違法とはならないが、加盟契約の更新打ち切りを背景とするなど他の事情と相まって「デイリー商品の見切り販売について嫌忌されているという認識が相当程度強固となっていたと推認される。」として、原告の主張を認め、被告による上記見切り販売を制限する行為が優越的地位の濫用に該当し、その違法性を認める旨判示しました。その後の平成26年判決もその判断を維持しました。

(3)独占禁止法25条の損害賠償責任について
 なお、同法25条の損害賠償責任は、独占禁止法上の違法性を理由とした、故意や過失がなかったことを証明しても責任を免れることができない特別な損害賠償責任と考えられています。つまり、無過失責任と考えられています(注2)。

6 コメント

 フランチャイズ・システムを用いた事業における優越的地位の濫用の該当の有無は、当事者間の相対的な力関係により判断される部分が多くあると考えられております。加えて、対策がなされていない場合には上記平成26年判決のように損害賠償事件として新たな問題に発展する可能性も考えられます。
 そのため、本部の立場に立った場合、加盟店とフランチャイズ・システムに関する事業において契約を締結する場面では、加盟店から訴訟を提起されるリスクを回避する対策を検討しておく必要があると考えられます。
 すなわち、加盟店の疑問に感じる点をなくし加盟店の意思に反して事業を進めてしまうことを防ぐために①締結時には契約内容を明確に説明した上で加盟店の疑問点についても説明する機会を設けることや、②締結後は対応窓口を設置するなど普段から加盟店とコミュニケーションを図ることのできる環境を整えることなどの対策が考えられます。
 また、フランチャイズ・システムでの契約において、優越的地位の濫用に該当し得る場合は、今回ご紹介した例に限りません。そのため、フランチャイズ・システムでの契約を締結される際は、本記事で参照した資料に留まらず、『フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方についてのガイドライン』(注3)等をご参照の上でご検討されることが必要となると考えられます。

【参考サイト】
(注1)『一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会フランチャイズチェーン統計調査』
http://www.jfa-fc.or.jp/particle/29.html

(注2)『独占禁止法違反行為に係る損害賠償支援制度の整備』
https://www.jftc.go.jp/dk/seido/minjikyusai/siso06/index.html

(注3)『フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方についてのガイドライン』
http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/franchise.html

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