広告作成時に気を付けたい景表法上のポイント
2018/05/11   広告法務, 景品表示法

1 はじめに

 消費者庁は、商品やサービスの広告について、景品表示法上の不当表示にあたる広告を作成したと判断した企業に対し、措置命令を発令します。17年度の措置命令は同庁発足後最多の50件を記録しており、同庁表示対策課は、今後も違反が疑われる事例について、積極的に調査していく方針です。措置命令が発せられた場合、企業イメージが悪化することは避けられません。そこで今回は、①表示該当制②不当表示該当制③その他の注意事項④コンプライアンス体制という観点から、広告作成時に気を付けたいポイントについて検討していきます。

2 表示該当制

(1)景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法。以下「法」といいます)5条は、次のように定めています。
「事業者は、自己の供給する商品又は役務の提供について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」
 広告が「表示」に該当するものでなければ、景表法上の規制を受けません。そこで、まずは「表示」について検討していきます。

(2)「表示」については、法2条4項に定義があります。2条4項については、5つの点に注意が必要です。
①「顧客を誘引する」とは、今まで取引関係のない者に対する誘引や、既に取引関係がある者に対する取引継続等の誘引を指します。
②「手段として」については、事業者の主観的意図ではなく、広告の受け手から見て、客観的に誘引の効果を持つものか否かで判断されます。
③「事業者」については法2条1項に定義があります。営利を目的としているかどうかを問わず、経済活動を行っている者は、全て事業者に該当します。
④「自己の供給する商品又は役務……」については、商品又は役務の提供・流通の実態を見て実質的に判断されます。例えば、フランチャイズチェーンの本部が表示行為を行っている場合、実際に売買契約の当事者として商品を供給しているのは支店ということになりますが、実態に即し、本部もこの要件を満たすと判断されます。
⑤「内閣総理大臣が指定するもの」とは、昭和37年公取委告示第3号を指します。極めて広範な内容となっているため、事業者が顧客を誘引する際に利用すると思われるものは、ほとんど全て含まれているように思われます。

3 不当表示該当制

 ここまでは、広告が景表法上の「表示」に該当することを確認しました。次に、広告が法5条で禁止される①優良誤認表示②有利誤認表示③その他の不当表示に該当しないかを確認する必要があります。
 景表法は何が不当表示かについて具体的な規定を置いていないため、消費者庁は不当表示該当制について「当該広告が一般消費者から見てどう映るか」という観点から判断しているようです。景表法の要件は抽象的でわかりにくいですが、判断に迷ったとき、上記観点は常に役立つものと思われます。

 まずは、共通する用件を確認します。
 共通する用件としては、
①「一般消費者に誤認される」
②「一般消費者に対し…示す」表示
③「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれ」
が挙げられます。

①優良誤認表示(法5条1号)
 法5条1号前段「実際のものよりも著しく優良であると示」す広告についても、上記観点から、一般消費者の誤認を招くかという観点から判断されます。広告を作成する事業者側から見て、表示内容と実際のものが科学的に等価か判断できない場合であっても、一般消費者にとって実際のものよりも著しく優良であると認識される表示になっていれば、不当表示に該当します。同号後段「事実に相違して……優良であると示す」広告についても、同様です。

②有利誤認表示
 法5条2号にいう「取引の相手方に著しく有利」とは、一般消費者の誰にとっても有利であると認識される場合だけでなく、特別の事情がある一般消費者によって有利と認識される場合も、そのような者から「誰にとっても有利」と判断される場合は、有利誤認表示に該当します。実際は1割引きであるにもかかわらず、「現金払いの方は2割引き」と表示する場合、現金払いの消費者は有利であると判断するため、有利誤認表示に該当することになります。
 有利誤認表示の内、価格表示については、公正取引委員会が価格表示ガイドラインを公表しています。従来は優良誤認表示の摘発が中心でしたが、近年は有利誤認表示での摘発が増えているため、このようなガイドラインも参考になると思います。

4 その他の注意事項

 景表法はあらゆる商品又は役務の取引についての不当表示について規制していますが、商品や役務によっては、別途他の法令による規制がなされていることもあります。例えば、薬事法・健康増進法・食品衛生法・食品表示法・不正競争防止法・特定商取引に関する法律等が挙げられます。自社の扱おうとしている商品又は役務の広告が、他法令の適用対象になっていないかの確認も必要です。
 また、他人の創作物を利用する場合は、当該他人の権利を侵害しないかの確認が必要です。利用物が誰の権利に属するものか、承諾を得たか、利用方法として適切か等の観点から検討を行う必要があります。この点に関する検討には、著作権法の知識が必要になることがあります。

5 コンプライアンス体制について

 16年に始まった課徴金納付命令も急増しており、不当表示のリスクは高まっています。もっとも、事業者には積極的な商品情報の提供が求められているため、過度に委縮して情報提供を過度に控えることは適切ではありません。また、広告表示を止めれば不当表示リスクを完全に回避できますが、消費者へのアピール効果は得られず、広告表示を適切に行っている他社に後れを取ることになります。消費者へのアピール効果と適切な情報量は維持しつつも、法令に違反しない広告作りが求められます。
 消費者へのアピール効果を求めたい広告制作担当者と不当表示リスクを抑えたい法務担当者は対立しがちですが、自社の利益のために働いているという立場は同じです。広告制作者と法務担当者は連絡を密に取り、アピール効果と不当表示リスクの調整について妥当と思われる線引きをし、広告制作担当者が法務担当者と同じ目線で広告を作成できるよう、体制を整えることが有効であると考えられます。

【企業法務ナビ内関連記事】
法務NAVIまとめー広告法務のチェックポイント1から10
        └広告違反のリスクを避けるポイント

【参考文献】
大元慎二(2017)『景品表示法 第5版』商事法務
白石忠志・平山賢太郎・籔内俊輔・染谷隆明・内田清人・古川昌平・中田邦博「景品表示法の現状と課題」『ジュリスト 2018年4月号』有斐閣 14頁~53頁

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