湯迫温泉に対する措置命令、景品表示法について
2018/03/05 コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法

はじめに
多くの商品やサービスに囲まれる中で、それらをどのようにアピールするかは重要となっているといえるでしょう。良いものであっても適切なアピールをしなければ、市場の中で埋もれてしまいます。もっとも、どんな内容のアピールであってもいいというものではなく、その表示の方法や内容については景品表示法による規律がなされています。今回は、湯迫(ゆば)温泉に対する景品表示法に基づく措置命令を題材に、景品表示法の規制について、本事件で問題となった優良誤認(以下、詳述します。)について見ていきます。
事案の概要
公正取引委員会の発表によりますと、有限会社湯迫温泉(以下、「湯迫温泉」といいます)は、公衆浴場を提供する事業者でした。湯迫温泉は、平成16年2月頃から平成26年3月中旬までの間、自社ウェブサイトにおいて「九種類の湯めぐり三昧」、また旅行情報ウェブサイトにおいて「遊び心がそそられる、11種類の湯めぐり」と記載し、あたかも本件施設において9種類または11種類の浴槽に温泉を使用しているかのように示す表示をしていました。しかし、平成21年頃以降ほとんどの期間において、温泉法2条1項に規定する温泉を使用した浴槽は、「大岩風呂」と「ひのき風呂」と称する浴槽の2つだけでした。そのため、公正取引委員会は、かかる表示が優良誤認にあたるとして、湯迫温泉に対して措置命令を行ないました。
景品表示法の概要
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な広告を防ぎ、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ることを目的としています(景品表示法(以下、「法」といいます)1条)。そこで、法4条は不当な表示の禁止について規定しています。本件で問題となった優良誤認は、同条の1号に規定されています。
優良誤認とは、事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、①実際のものよりも著しく優良であると示すもの、または②事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものであって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をいいます。
かかる規定に違反した場合には、公正取引委員会は、違反行為の差止めや再発防止に必要な事項、またこれらの実施に関連する公示や必要な事項を命ずることができます(法6条)。本来は内閣総理大臣の権限ですが、法12条1項により消費者庁長官に委任され、さらに政令により再び委任(法12条2項)され、最終的に公正取引委員会が行使します。
具体的な違反事例
イメージしやすい例としては、原産国が海外なのに「日本国産」と表示したり、人造ダイヤのネックレスに「天然ダイヤ」と表示するといった例があるでしょう。もっとも、実際に見られない景観を旅行パンフレットへ表示する行為も優良誤認に当たります。文章だけでなく写真も表示に含まれますので、このような形での広告にも注意が必要でしょう。
他の違反行為
法4条2号では、有利誤認に当たる行為も禁止の対象としています。有利誤認とは、前述の優良誤認と類似の定義ですが、①と②の要件については「有利」(優良→有利)を要件としています。その例としては、基本価格を記載せずに、「今なら半額!」と表示したが、実は50%割引とは認められない料金で仕事を請け負っていた場合があります。
コメント
湯迫温泉では、当時合計13の浴槽を提供していました。そのうち、水を使用していないサウナ風呂を除けば11の浴槽を提供していました。温泉法2条1項には、「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいうとされています。このような浴槽に該当したものは2つだけであったことから、法律の正しい解釈・適用を誤ってしまった結果、その誤認が表示にも現れてしまった可能性もあると思います。法律に則ったマーケティングがなされているか、事前にチェックする必要があるでしょう。その際には、関連しそうな法令について法務担当者で事前に調査を行い、表現方法のチェック項目を作成し、マーケティング担当者に第一次的な審査をお願いすることもできるでしょう。
また、販売促進を意識するあまり、消費者に誤認を与えてしまう恐れのある表現がなされていないか、消費者の目線になって今一度ウェブサイトや広告の表示を確認し、事後のチェックをしてみることも有益でしょう。
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