来秋で終了、特定労働者派遣事業とは
2017/11/21 労務法務, コンプライアンス, 労働者派遣法

はじめに
日経新聞電子版は20日、改正労働者派遣法に基づき来年2018年9月に特定労働者派遣事業が廃止されることを控え、派遣事業者が新たに許可を取得する動きが出ている旨報じました。新たな許可基準の厳格さから、許可取得件数は廃業件数の4分の1程度とのことです。今回は派遣業許可の新基準について見ていきます。
労働者派遣法の改正点
労働者派遣法は2015年9月30日に改正法が施行されました。これにより派遣事業者は、自社の従業員に教育や訓練、コンサルティングなどを行うキャリアアップ措置が義務付けられ、従来、研究や通訳といった特定の業種(いわゆる26業種)以外は派遣期間制限が設けられておりましたが、それも大幅に緩和されました。また派遣労働者と派遣先の同種業務従事者との均衡待遇の確保義務に加え、派遣労働者からの求めにより賃金水準の決定、福利厚生の実施、教育訓練の実施義務が課されました。そして従来は特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業に分かれており、前者については届出のみで事業を営むことが可能となっていたところを廃止とし、許可制による一本化がなされることとなりました。
特定労働者派遣業とは
特定労働者派遣業とは、派遣元に常時雇用されている社員を他社に派遣する業態の派遣業を言います。一般的には派遣元に正社員として雇用されております。主にITや機械系の技術者が多く、派遣先企業からの依頼によって派遣し、派遣先の指揮の下に労働を行ないます。いわゆるアウトソーシングとも呼ばれ、旧法では届出のみで開業することができておりました(旧16条)。これに対し一般労働者派遣業とは、労働者が派遣元に常時雇用されておらず、非正規雇用や登録型の雇用形態となっており、そのような労働者を派遣する形態となっております。一般に派遣業といえばこちらを指すことが多く、日雇い労働もこちらに含まれます。この場合、特定労働者派遣業と異なり、届出では足りず、厚生労働大臣による許可を受ける必要があります。本改正によりこれらは一本化され、2018年9月30日をもって前者は廃止となります。それ以降は許可受けなければ営むことはできなくなります。以下新基準を示します。
新しい許可基準
(1)専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的としていないこと。
(2)派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして以下に適合すること。
①派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること。
②教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間保存していること。
③派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定を置いていないこと。
④派遣契約終了後、派遣元の責任により次の派遣先が見つけられない場合の手当の規定があること。
⑤派遣労働者に対し、安全衛生教育の実施体制を整備していること。
⑥雇用安定措置の義務違反により指導を受け、是正していない者でないこと。
(3)個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。
(4)事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであることして以下の基準をみたすこと。
①資産から負債を控除した額が2,000万円✕事業所数、現預金額が1,500万円✕事業所数以上であること。
②事業所の面積がおおむね20平方メートル以上であること。
コメント
以上のように派遣事業の新許可基準は全体的に見て、旧法時代のものよりも要件が強化されております。特に(2)の各要件は今回新しく追加されたもので、これがかなりの関門になっていると言えるでしょう。しかしその反面要件が緩和されている部分もあります。(4)の資産要件に関しては、当分の間は事業所が一つで派遣労働者が10人以下である小規模事業者の場合は1,000万円(現預金額は800万円)、派遣労働者が5人以下の場合は500万円(現預金額は400万円)で良いとされております。2015年のピークの頃には7万件程度あった特定派遣事業所は現在約5万5000となっておりますが、来年の10月からはそれら全てが廃止となります。また昨今、派遣ではなく主に請負の形で派遣している事業者でも、コンプライアンス意識の向上により、派遣先企業から派遣業の許可の取得が求められるとの声も上がっております。これまでの届出制と比べると、今回の許可基準はかなりの負担となると言えますが、上記基準を踏まえて余裕をもって許可申請を行っていくことが重要と言えるでしょう。
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