パテントトロールとの訴訟で、Appleに約500億円の賠償命令
2017/11/06   知財・ライセンス, 特許法

1 はじめに

 Apple社は、VirnetX社に対し、テキサス州の連邦裁判所から4億3970万ドル(約500億円)の賠償を支払えとの判決を受けました。iPhoneに搭載されているiOSのiMessageやFaceTimeに、VirnetX社が保有する特許を侵害する技術が使われていることが理由となっています。
 VirnetX社は、パテントロールであり、実体のない企業であると考えられています。パテントトロールからの訴訟によって、企業が数億円単位の莫大な損害賠償金を支払わされることがあり得ます。日本ではパテントトロールからの訴訟はあまり多く報告されていませんが、今後日本で同じような動きが広まる可能性もあります。ここでは、パテントトロールをめぐる紛争について見ていきたいと思います。

2 パテントトロールとは

 パテント・トロールとは、ある特許について、その特許をビジネスに利用する意思もないにも関わらず、その特許を使って莫大な利益を上げようとする人物・企業・組織を指します。
 このようなパテントトロールは、過去20年間にわたりアメリカのハイテク企業に脅威をもたらしてきました。Googleのオンライン広告などを狙って訴訟を起こし、高額の賠償金を勝ち取ることもありました。

3 日本での状況

(1) 概要
 アメリカでは、損害賠償額の抑制や差止請求の基準厳格化によって、2015年ごろからパテントトロールが沈静化してきています。トロールが日本にやってくる心配もありましたが、日本では年間0~4件で推移しています。ただ、ヨーロッパではトロールによる訴訟が増えてきています。

(2) パテントプール
 複数の特許権者が、特許権をそのグループが定めた特定の組織に持ち寄って、その組織を通じてグループの構成者等に必要な特許権をライセンスする仕組みのことです。
 たとえば、MPEG LA, LCCは、MPEG-2(動画の高圧縮規格)に関して25社が保有する特許について、約1500社へ特許利用のライセンス契約を結んでいます。 契約者数が非常に多いパテントプールの代表例です。
 日本の大手メーカーもパテントプールからライセンス交渉を持ちかけられることが出てきたようです。

(3) 今後の変化
 従来は同業他社間での争いが多かったですが、IT化によって、異業種間での紛争が増えてその解決も困難になっています。
 お互いが持つ特許の使用を認め合うクロスライセンスなどの従来的な解決方法も利用しにくいといえます。製品の機能が似ている同業のライバル同士ならば、クロスライセンスによる解決が図りやすいです。しかし、異業種間では相手の特許が自分の製品にとって有用といえないことも多く、この解決方法も利用しにくいです。また、ライセンス料の相場観や交渉の進め方も違うなど障害も多いといえます。
 特許庁も異業種間でのライセンス交渉や注意点について、ガイドラインをまとめる予定です。

(参考)
植松正史「特許紛争変わる構図」日本経済新聞2017年11月6日第11面

シェアする

  • はてなブックマークに追加
  • LINEで送る
  • 資質タイプ×業務フィールドチェック
  • TKC
  • 法務人材の紹介 経験者・法科大学院修了生
  • 法務人材の派遣 登録者多数/高い法的素養

新着情報

公式メールマガジン

企業法務ナビでは、不定期に法務に関する有益な情報(最新の法律情報、研修、交流会(MSサロン)の開催)をお届けするメールマガジンを配信しています。

申込は、こちらのボタンから。

メルマガ会員登録

公式SNS

企業法務ナビでは各種SNSでも
法務ニュースの新着情報をお届けしております。

企業法務ナビの課題別ソリューション

企業法務人手不足を解消したい!

2007年創業以来、法務経験者・法科大学院修了生など
企業法務に特化した人材紹介・派遣を行っております。

業務を効率化したい!

企業法務業務を効率化したい!

契約法務、翻訳等、法務部門に関連する業務を
効率化するリーガルテック商材や、
アウトソーシングサービス等をご紹介しています。

企業法務の業務を効率化

公式メールマガジン

企業法務ナビでは、不定期に法務に関する有益な情報(最新の法律情報、研修、交流会(MSサロン)の開催)をお届けするメールマガジンを配信しています。

申込は、こちらのボタンから。

メルマガ会員登録

公式SNS

企業法務ナビでは各種SNSでも
法務ニュースの新着情報をお届けしております。

企業法務ナビに興味を持たれた法人様へ

企業法務ナビを活用して顧客開拓をされたい企業、弁護士の方はこちらからお問い合わせください。