未払い賃金、時効見直しか
2017/07/20 労務法務, 労働法全般, その他

1.未払い賃金問題とは
あらかじめ労働契約や就業規則で定められた賃金を、所定の支払日に支払わなかった場合には、その使用者たる会社は、労働基準法に違反することになります(労働法第11条、第24条)。
したがって未払賃金があるときにまず確認するべきことは、支払われなかった賃金の種類(定期賃金、諸手当、賞与等)、金額、未払の理由、支払の根拠となる規程の有無やその内容です。
実際、今年宅配最大手のヤマト運輸でも、配達員の未払い賃金につき一部地域での支払いを始めた、という報道を目にされた方も多いのではないでしょうか。
2.現行の時効について
ここで、賃金等の請求権は2年間で時効にかかるとされています(労働基準法第115条)。
前述のヤマト運輸でも未払い賃金は過去2年分にさかのぼっての計算となっています。
ただし、退職金に関しては、金額が高額であり、かつ、退職した人が会社に請求することが難しいので、5年間で時効にかかるとされています。
つまり、未払い賃金を請求する訴訟をした場合、基本的に、会社側は賃金未払いが立証されれば、賃金債権の時効を根拠に、2年前まで遡って支払う必要があるということになります。
3.民法改正に伴う変化と問題点
この2年の時効を見直すという議論が、今月12日、厚生労働省の労働政策審議会で始まりました。
これは、消費者保護の観点から、時効を原則5年に統一するという改正民法が
5月に成立したことを受けた議論といえそうです。
これに伴って、民法上はもともと1年だった賃金請求権の時効もなくなり、5年になります。
そうすると、労働基準法の2年の規定が民法の期間よりも短くなり、労働者保護に資さなくなる、という問題が生まれます。
4.最後に
使用者側としては、できるだけ時効を短くしたいというのが当然の本音でしょう。
対する労働者側としては、できるだけ時効を長くして、少しでも取れる賃金を多くしたいと思うはずです。
改正民法が20年にも施行されると言われている中、このような使用者側と労働者側との軋轢をどう解決するか、有識者による検討が待たれています。
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