特許庁が対策へ、第三者による商標の先取り出願について
2017/07/19   知財・ライセンス, 商標法

はじめに

特許庁は先月21日、無関係の第三者によって先に商標登録出願がなされても、その出願が却下されるのを待つ必要が無い旨発表しました。先に出願されていても、自身の出願に問題が無ければ審査開始がなされるとのこと。今回は特許庁の審査運用の変更点と第三者による出願についてみていきます。

事案の概要

報道などによりますと、近年当事者とは無関係な第三者による商標出願が相次いでいるとのことです。トヨタ自動車の「MIRAI(ミライ)」「マイナンバー」「プレミアムフライデー」などありとあらゆる商標が第三者によって既に出願されており、最近ではタレントのピコ太郎氏の「PPAP」などもすでに出願されているとのことです。こういった他人の商標を先取りして出願する主な目的は、本当の権利者よりも先に登録を取得し権利を売ることにあるとされております。欧米や中国など海外でも見られる、いわゆるパテント・トロールに近いものと言えます。特許庁によりますと、こういった出願のほとんどは登録手数料も支払われていない瑕疵ある出願で、通常はほとんどが却下されるとのことです。従来は真の権利者はこの先願が却下されるのを待って出願を行っておりました。

商標登録について

商標権は特定のマークやロゴなどと、それを使用する商品・サービスとで一対となって使用できる権利です。そしてその商標権を取得するには特許庁に登録出願し、登録を受ける必要があります(商標法3条)。出願がなされますと、特許庁によって登録要件を満たしているかの審査がなされます(14条)。同一または類似の商標について複数の出願がなされた場合には「最先」の商標登録出願人のみが登録を受けることになります(8条1項)。自己と他人の商標等と区別ができない場合や、他人のものと類似する場合、公益に反するといった登録できない場合には、理由を付した上で拒絶査定がなされます(15条、15条の2)。拒絶事由が無い場合は登録がなされます(16条)。

特許庁の運用のポイント

先に他人により出願がなされていても、出願手数料の支払いがなされていない、いわゆる「手続上の瑕疵のある出願」である場合は通常4~6ヶ月で却下されると言われております。以前はこの却下を待って出願を行っておりました。特許庁では瑕疵ある出願が先になされていても、後願の出願に瑕疵がなければ、先願が却下されるのを待たずに実体審査を開始する運用を既に始めているとのことです。そして後願の出願人には一旦は拒絶理由を通知することになっても、先願に瑕疵があり、これが却下され次第登録査定を行う旨明示する運用に変更するとしています。また仮に先願に瑕疵がなくとも適切に審査した上で、他人の商標の先取りとなる場合は3条1項、4条1項に基づき拒絶査定するとしています。

先に商標登録がなされてしまった場合

上記のとおり他人の商品、役務を表示するものとして広く認識されている商標は登録することができません(4条1項10号、11号)。しかしもし登録がなされてしまった場合は登録異議の申立て(43条の2)と登録無効審判の申立て(46条)ができます。異議の申立ては商標掲載公報の発行の日から2ヶ月以内にする必要があります。無効審判申立てには原則的に期間制限はありません。異議申立ては誰からでも行なえますが、無効審判申立ては利害関係人からしか行えないという違いがあります。これらの審理の結果に不服がある場合は知財高裁に控訴することになります。

コメント

昨今、このように他人の商標を先取りして膨大な数の出願を行っている人や業者が存在します。このような行為を行っている人は現役の弁理士や元弁理士といった商標や特許の専門家であることが多いと言われております。それゆえ、このような先願を行っても最終的には却下されるか拒絶査定がなされるということは熟知した上で行っていると言われます。つまり狙いは先に登録して権利を買わせることよりも、却下を待つまでの時間を惜しむ権利者から、出願を取り下げるかわりに示談金を得ようとしているのではないかとされております。以上のように他人に先に出願されても原則的に登録されることはなく、また運用の変更により却下を待たずに審査が開始されるため、先願の却下を待つ必要もなくなりました。もし無関係の第三者に、自社の商標が先に出願されていたとしても、慌てることなく出願手続を開始して、先願者からの要求に応じないことが重要と言えるでしょう。

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