ヤマハがJASRACに対抗、「音楽使用料」について
2017/02/16   知財・ライセンス, 著作権法

はじめに

JASRACが音楽教室での演奏からも著作権の使用料を徴収する方針を固めている問題でヤマハや河合など7団体は「音楽教室を守る会」を結成し対抗する構えを見せています。音楽教室のレッスンでの演奏からも使用料を取れるのか。今回はこの点について見ていきます。

事件の概要

日本音楽著作権協会(JASRAC)はヤマハや河合楽器製作所の音楽教室の演奏でもJASRACが管理する楽曲が使われているとして、年間受講料収入の2.5%の著作権料を徴収する方針を固めました。JASRACによりますとヤマハ、河合楽器製作所を含め国内には約1万1千ヶ所の音楽教室があり、そのうち9千ヶ所を徴収の対象とし個人教室からは当面除外するとしています。これに対しヤマハ音楽振興会、河合楽器製作所、島村楽器、全日本ピアノ指導者協会は3日、「音楽教室を守る会」を結成しました。同会によりますと演奏権が及ぶのは公衆に聞かせるための演奏であり、練習や指導のための演奏は該当しないと反論しています。

著作権とは

著作権、著作隣接権については以前にも取り上げましたがここでも簡単に触れておきます。著作権とは著作物を排他的に支配する権利を言います。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものっであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を言うとされております(著作権法2条1号)。音楽を例に上げると、曲や歌詞について作曲家や作詞家に著作権が認められます。著作隣接権とはそういった楽曲を演奏したり録音することによって公衆に発信する人に認められる権利を言います。

著作権料について

著作権法22条によりますと、著作者はその著作物を公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し又は演奏する権利を専有するとしています。そして38条では営利を目的とせず、聴衆から料金を受けない場合には公に上演し、演奏することができるとしています。つまり営利を目的とせずに演奏するだけである場合には著作権に抵触せず、著作権料を支払う必要がないということです。つまり本件で問題となっているのは音楽教室でレッスンとして演奏されることが「営利目的」と言えるか、また生徒相手でも「公衆」に該当するかということです。

判例の考え方

この「営利目的」「公衆」該当性については有名な判例が存在します。カラオケスナック店でホステスや客がカラオケ装置を使って歌唱することも「公衆」に聴かせることに該当するとし、また客の歌唱自体には「営利目的」は無いが店が設置したカラオケ装置を使いホステスらの勧めに従って客が歌唱することも、店の雰囲気を醸成するものであるから店の営業政策の一環であるとして、店の従業員が歌唱することと同視し「営利目的」に該当するとしています(最判昭和63年3月15日)。つまり他の客が聴く以上「公衆」に該当し、その雰囲気等を店が利用している以上「営利目的」該当するということです。店が著作物である楽曲によって利益を得ている以上、店自体が演奏していなくても使用料を支払うべきであるという価値判断が働いていると言えます。

コメント

JASRACも上記最高裁判例の考え方を使って音楽教室での楽曲使用に適用しようと考えたものと思われます。この判例の考え方から見ればたしかに講師や生徒が他の生徒の前で演奏する以上「公衆」に対して演奏していると見ることができるかもしれません。また音楽教室もその楽曲を使用することによって指導上の効率や雰囲気を醸成させ、それにより利益を得ていると考えるのであれば「営利目的」があると判断される可能性もあります。しかし一方で1対1のマンツーマン指導を行っている教室の場合はこの判例の考え方からしても「公衆」に演奏しているとは言えず。またカラオケと違ってJASRACが管理していないオリジナル曲や著作権の切れている古いクラシック曲を使うことも多い点を考えれば、JASRACの一律徴収方針には単純に判例の考え方を適用できないと言えます。今後の展開を注視する必要があるでしょう。店舗等で客等が楽曲を使用する場合には、店自体が使用していなくても使用料を徴収される可能性がある点を考慮しておくことが重要と言えるでしょう。

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