同一労働同一賃金に関する中間報告について
2016/12/27   労務法務, 労働者派遣法

概要

政府は12月16日、正規社員と契約社員・パートタイム従業員等非正規社員の待遇格差を是正するための「同一労働同一賃金」実現に向けての考え方を、中間報告としてまとめました。
この中間報告は、正規社員と非正規社員間の待遇に差をつける場合に、「不当な賃金格差」となるような基準等を示したガイドラインの概要についての報告となります。
なお、かかるガイドラインについては今月の掲示が予定されております。
今回は中間報告の内容について見ていきたいと思います。

同一労働同一賃金の原則とは

「同一労働同一賃金の原則」とは、同じ価値の仕事に対しては、同一水準の賃金が支払われるべきである」とする原則を言います。
かかる原則は、ILO(国際労働機関)憲章・世界人権宣言・国際人権法などに明記されており、特にILO憲章では基本的人権の一つとされています。
諸外国では既にに同一労働同一賃金実現に向けた制度構築に取り組んでおり、フランス・ドイツなどでは雇用形態を問わず職務給制度を採用し、具体的な賃金決定方法について労働者自身が知り得る環境になっています。
日本国内においては、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」(同一労働同一賃金推進法)が2015年9月に可決され、2015年9月16日より施行されています。

同一労働同一賃金に関する裁判例

労働契約法20条では、有期労働契約を締結している労働者について、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を課すことを禁止していますが、これまで同条違反を認めた判決はありませんでした。
もっとも平成28年5月13日東京地裁判決においては、同条違反である事例として注目を集めました。
この事件では、定年後に嘱託従業員として再雇用されたトラック運転手が、定年前と同じ業務であるにも関わらず、賃金に格差が生じたことは違法であると主張しました。
これに対し、「当該職務の内容及び配置の変更の範囲が無期契約労働者と同一であるにもかかわらず、労働者にとって重要な労働条件である賃金の額について、有期契約労働者と無期契約労働者との間に相違を設ける」ことは、「その相違の程度にかかわらず、これを正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるとの評価を免れないものというべきである。」とし、本事案においては「仕事の内容は正社員と同一と認められ、賃金に差があるのは労働契約法に反する」として、会社に対し正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡しました。

中間報告について

中間報告によれば日本国においては、
1)正規社員・非正規社員双方に対して、賃金決定の基準を明確化する
2)職務・能力等と、賃金を含めた待遇水準の関係性を明らかにする
3)「能力開発機会」の均等・均衡を促進する
ことが、非正規社員の待遇改善を実現させるためのポイントであり、ガイドラインはそのための重要な手段として位置づけられるとしています。
また、ガイドライン案は第一義的には現行法の解釈を明確化するものではあるが、効力自体を発生させるものではないことは周知させるべきであるとしていています。

コメント

政府としては、同一労働同一賃金の実現に向けて2019年に労働契約法、労働者派遣法、パート労働法の改正・施行を目指しています。
今月中に掲示予定のガイドラインは、法施行までの間に企業側に自主的な努力を求めるための指針にすぎません。
しかしながら、同一労働同一賃金の原則は、ILO(国際労働機関)憲章・世界人権宣言・国際人権法などに明記されていること、OECD(経済協力開発機構)は日本に対して2008年に正社員・非正社員の賃金・手当の是正を勧告していること、などを考慮すれば、今後は企業側としても正社員及び非正社員の待遇格差の是正を積極的に行う措置を講ずることが求められると考えられます。
もっとも年功序列制度等を採用している企業が多い日本においては、まずは①格差を認める「合理的な理由」について検討る、②職務内容と関係しない手当等の見直しを行う、等から始める必要がありそうです。
そして、同一労働同一賃金の取り組みにより、「低賃金での非正規社員人材の確保」という構図が崩れるため、正規社員の給与分が減額される可能性も考えられます。そのためには、やはり正規社員として給与分に見合った業務をこなせるスキルや能力等を身に付けておく必要があるでしょう。

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