婚活業者側が勝訴、マンション管理規約を巡る紛争について
2016/11/08   不動産法務

はじめに

タワーマンションの管理組合が入居者である婚活業者に対し、マンション内で窓口業務を行うことは管理規約違反であるとして店舗としての使用禁止を求めていた訴訟で業者側勝訴の判決が出されていた旨、産経新聞が3日付で報じました。マンションの入居者と管理規約を巡る紛争について見ていきます。

事件の概要

関西地方の繁華街に立っているあるタワーマンションではその管理規約で「住宅または住宅兼事務所として使用するものとし、他の用途に使用してはならない」と規定していました。そしてその細則では店舗としての使用を禁止し、不特定多数の人の出入りがある形態の使用を禁止しておりました。そのマンションには婚活業者が入居しており、その事務所には週平均で70人前後の来訪者があったとされております。管理組合は婚活業者に対して営業を中止するよう警告しました。これに対して業者側は裁判所に民事調停を申立て、両者の間でマンション内での来訪客のある窓口業務は中止する、業種の如何にかかわらず、来訪者のある窓口業務を行った場合は例外なく管理規約に違反するものとするとの合意がまとまりました。しかしその後も業者側は業務を中止しようとせず業務縮小の兆しも見られないとして管理組合は業務中止を求めて提訴しました。業者側は他の入居している弁護士事務所や税理士事務所がどのように対応しているか説明するよう求めた上で、婚活業者だけを狙い撃ちした業種差別であると反論しています。

マンション管理規約とは

区分所有法30条1項によりますと「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」としています。管理規約とはマンション等の区分建物に関する管理組合の根本規則を言います。国土交通省によりますと、各マンションの実情に応じて専有部分や共用部分の管理、敷地の用法、費用負担等について管理組合によって定めるものとし、その参考としてマンション標準管理規約と策定して公表しております。通常管理規約にはその占有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならないといった規約が盛り込まれており店舗や事務所として使用することを禁止している場合が多く、国交省の標準管理規約でも12条でそのように記載されております。入居者がこれに違反している場合には、管理組合は区分所有者の共同の利益のためにその行為の停止、除去、予防その他必要な措置を請求することができます(57条1項)。また管理組合集会の決議により提訴することもできます(同2項)。

民事調停について

本件で管理組合と入居業者が行った民事調停について簡単に触れておきます。民事調停とは通常簡易裁判所で行われる裁判官と民事調停委員(民事調停法5条1項)を間に入れた当事者間の話し合いによる紛争解決方法です。訴訟とは違った裁判外紛争解決手続の一つで、判決は言い渡されませんが、当事者間の合意が困難な場合には裁判所が当事者の公平を考慮して調停に代わる決定を出すことが出来ます(17条)。この決定に対して2週間以内に異議を申立てた場合には効力を失います(18条)。調停不成立の場合には訴訟に移行することになりますが、うまく調停が成立した場合には調書に記載され、裁判上の和解と同一の効力を有することになります(16条)。裁判上の和解の効力は確定判決と同一の効力を有するとされております(民事訴訟法267条)。

本件の問題点

本件で問題となっているのは、管理規約の細則に規定されている「店舗使用の禁止」に婚活業者が該当するかという点、他の弁護士事務所、税理士事務所といった士業は抵触しないのかという点、そして調停条項にもかかわらず士業事務所への対応に比して婚活業者への対応だけが厳格すぎるのではないかという点です。

コメント

本件判決では婚活業者が調停成立以降も婚活相談業務に係る店舗として使用し続けていると認定した上で、他の士業事務所に対してはどのような措置を取っているかが明らかではなく、婚活業者だけを相手取って訴訟を提起したことは権利の濫用であるとしました。また調停内容である「業種の如何にかかわらず」店舗に該当することとなるという点についても入居者全員に公平に適用されるべきであるとして、本件が婚活業者だけを狙い撃ちしていると指摘しました。管理規約や細則、そして調停条項を前提とすれば婚活業者が「店舗」に該当し規約違反となることは明らかであると言えます。しかし裁判所は他の士業事務所には目をつぶり、婚活業者だけを狙い撃ちした管理組合の対応を権利濫用そして棄却しました。管理規約の運用は入居者に公平なものでなくてはならないという判断です。また本件のようなトラブルを招いた原因として管理規約の定め方の曖昧さにもあると言えます。あらかじめどのような業種の店舗が違反となるかまでを細かく規定しておくことが必要であったと言えます。大規模な区分所有建物を運営する事業者は管理規約の内容と公平な運用を心がけることが重要と言えるでしょう。

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