酒の安売り罰則も
2016/11/03 コンプライアンス, 行政対応, 民法・商法, 小売

・はじめに
平成28年10月25日、国税庁と財務省は、量販店等による酒の過度な安売りを規制する「公正な取引の基準」をまとめたことを発表しました。仕入原価と販売管理費の合計額を下回る値段で安売りを続ける販売業者に対しては、酒類販売の免許取消し等の処分が下される可能性が出てきました。同年5月には、酒類の過剰な安売りを規制する酒税法等の改正案が成立しており、今回その具体的内容を明らかにしたと言えます。
・規制の経緯
当初は、酒税の安定した賦課徴収を図るために既存の小売業者が保護されていました。しかし、規制緩和の流れに基づき、2001年1月に距離基準(ある酒店から一定の距離内には新たな酒店を開店できませんでした。)が廃止され、2003年9月には人口基準(酒店は一定人口ごとに一定の店舗数と決まっていました。)が順次廃止されました。このような自由競争の促進により、大型量販店が客寄せのためビール等を採算度外視で安売りするという不当廉売が行われ、比較的小規模の酒店等の経営が圧迫されている現状があります。それに対処するため、上記で述べたとおり、今年の5月27日に酒類の安売りを規制する改正酒税法が参議院本会議で可決、成立しました。これまでの国税庁による既存の取引指針や公正取引委員会による摘発では、十分にその機能が発揮されていたとはいえず、今回の酒税法改正に踏み切る形となった言えます。
議案情報(参議院)
・規制の対象
規制の対象は、仕入原価と販売管理費を合わせた額を下回る安売りを行い、周囲の業者に相当程度影響を及ぼすと判断された業者となります。販売管理費とは、販売費及び一般管理費のことであり、一般管理費とは企業の営業活動全般や一般管理業務をすることにより発生する費用のことを指します。
参考サイト 販管費(iFinance)
単に大型量販店が酒類を大量に仕入れコストを抑え、低価格で販売する手法自体には問題は無く、その販売方法により、周囲の業者に影響を及ぼす可能性がある場合に規制の対象となり得ます。そして国税庁は、情報提供に基づき調査し、基準に違反している業者には改善命令や業者名の公表、免許取消し等をすることが出来るようになります。今回規制対象を明確化した改正酒税法は、年明けに取引基準等を確定し、来年の平成29年6月に施行される予定です。
改正酒税法条文(PDF) 今回関係しているのは八十六条の三の「公正な取引の基準」となります。
・おわりに
今回の酒税法の改正とその基準の明確化は、 罰則が新設されることで業者が萎縮し、健全な価格競争を妨げることにもつながると考えられます。また、基準となる販売管理費はかなり広い概念であり、その額を正確に計算できるのかという疑問も否定できません。しかし、政府が酒類の販売に対し、これまでの規制緩和の方針を少し変化させ始めたと言えます。国による規制強化・緩和は事業者にも大きな影響を与えます。例えば、株式会社が特別養護老人ホームの運営(現在は地方公共団体・社会福祉法人しか運営できません。)をできるようにする動きがあり、介護事業者としてはその流れを想定し対応しなければなりません。このように政府による様々な規制強化・緩和の動きがあり、企業の法務担当者として自らの事業に関連する規制の動向には機敏に対応していくべきでしょう。
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