元タクシー運転手が提訴、雇い止めについて
2016/10/14   労務法務, 労働法全般

はじめに

 2016年10月7日、国際自動車の有期労働者であった元運転者10名と労働組合が原告となり、同社と社長らに対し、運転手らの地位確認及び未払い賃金請求訴訟を東京地裁において提訴しました。その中で、会社提訴が雇い止めの理由となるのかが問題となりました。そこで、有期労働契約、雇い止めの制度を見ていきます。

事案の概要

 上記の10名は、1年ごとに定年後の再雇用契約を結ぶ必要のある65歳以上の男女で、今年1月に国際自動車に対し、未払い賃金の請求訴訟を提起していました。ところが、その10名は突然再雇用や契約の打ち切りを同社から告げられ、今年1~9月にかけて契約をされることはありませんでした。同社は、労働組合に対し、会社提訴をする者は再雇用しない旨を伝えていたそうです。そこで、原告らは、会社提訴を理由とする雇い止めは不当として、上記訴訟を提起しました。
本件について YOMIURI ONLINE
本件について 産経ニュース

有期労働契約とは

 労働契約には、期限の定めのないものと期限の定めのあるものがあり、前者を無期労働契約といい、後者を有期労働契約といいます。有期労働契約には、1ヵ月契約、6ヵ月契約など様々なものがありますが、原則として、上限は最長3年となっており、これを超えることは禁止されています(労働基準法14条1項柱書)。これは、民法628条が有期労働契約の解除について、「やむを得ない事由」を要求していることから、労働者が不当に長期間契約に拘束されることを避けるためです。
 例外として、高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者(労働基準法14条1項1号)、満60歳以上の者(同項2号)との有期労働契約については、上限を最長5年とすることが許されています。
 労働者の地位の安定、期待を保護するため、労働契約法17条1項は、使用者が期間途中で解雇することを禁止しています。同様のことを規定している民法628条からすると、労働者も期間途中で退職することは難しいとも思えます。しかし、労働基準法附則第137条が、契約から1年後に労働者が使用者に申し出ることで退職できることを定めている
ので、労働者が不当に契約に拘束されることはありません。
 他に、必要以上に短い期間で契約を締結することが禁止され(労働契約法17条2項)、有期労働契約であることを理由とする不合理な労働条件を禁止しています。
有期労働契約の定義・期間について わーくわくネットひろしま
民法628と労働契約法17条1項について もっと高松
労働契約法

雇い止めとは

 雇い止めとは、有期労働契約において、労働契約を更新しないことを言います。原則として、有期労働契約は期間が終了すれば当然に契約は終了しますので、更新がない場合には仕事を続けられません。
(更新なく労働者が就労を続け、使用者が意義を唱えなかった場合、民法629条1項により黙示の更新があったとされ、同一の条件で無期の労働契約が推定されます。)
 もっとも、雇い止めについて判例が蓄積されており、現在では労働契約法19条に雇い止め法理が規定されています。同条では、1号または2号に該当し、雇い止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときに、雇い止めが無効となります。本件では、おそらく1号の実質無期労働契約型に該当すると
思われます。
 〇実質無期労働契約型(同条1号)
 期間の定めのある労働契約(有期契約・期間雇用)が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合です。同号の元となった東芝柳町工場事件では、5~23回の契約更新のほか、臨時工と正社員で労働内容に差異がなかったこと、過去に雇い止めをされたことがないなどの事情から、実質的に無期の労働契約であると評価され、解雇権濫用法理を類推し、雇い止めが無効になりました。
雇い止めについて 東京弁護士会
雇い止め法理について 弁護士による労働問題Online
東芝柳町工場事件について 労働政策研究・研修機構
※契約期間が2カ月の労働契約書を取り交わした基幹臨時工が、当該契約が5回~23回にわたって更新されました。締結の際、本工への登用を期待させる言動をYからXは受けましたが、YからXに雇止めの意思表示をされました。

コメント

 本件のように企業提訴を理由として雇い止めが認められた場合、労働者の本質である(労働基準法9条)賃金請求権の行使や憲法32条で保障されている裁判を受ける権利の行使が躊躇されるおそれがあります。そこで、賃金請求権や裁判を受ける権利の行使の観点から、本件雇い止めには、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないと考えます。
 確かに、有期労働契約は通常の採用より簡易な手続きであることから、解雇(労働契約法16条)よりも緩く雇い止めは判断されることになると思います。しかし、労働者にあまりに不利益となる理由・方法は雇い止めであっても許されるべきではないので、雇い止めの事由については、労働者側にも配慮した、より筋の通ったものを選択すべきであると考えます。

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