ITデータも捜索可能に、国税犯則取締法改正への動き
2016/10/12   税務法務, 法改正, 税法

はじめに

政府は脱税調査に際し、クラウド等のインターネット上のデータも強制的に捜査する権限を認めるよう国税犯則取締法を改正する検討に入りました。国税犯則取締法の改正は1948年制定以降68年ぶりとのこと。今年年末には税制改正大綱を閣議決定し、来年2月頃に国会に提出する見込みです。今回は改正のポイントを見ていきます。

法改正への経緯

国税犯則取締法(国犯法)とは、国税に関する犯則事件において収税官吏の権限等を定める法律です。国税査察官が租税犯について調査するにあたり、裁判所の許可を得て臨検、捜索、差押え等ができる旨規定されております。租税犯も刑事犯であることから刑法の適用は受けますが、その特殊性から刑事訴訟法とは違った規定のしかたがなされております。また制定されたのが1948年と古く、条文数も22条と少ないことから、時代の流れに即した国税犯則調査が困難であると言われてきました。たとえばパソコン等の電子機器内のデータやインターネット上のデータ等の捜査は難しく、また夜間の捜査もできませんでした。そこで財務省と国税庁はいまだカタカナ表記の残る国犯法の内容を現代の実情に合わせて改正した上で国税通則法に編入するため検討に入りました。

改正のポイント

(1)ITデータ等の強制捜査
インターネットが普及しIT化が進む中、犯罪もそれに伴ってIT化が進みました。現代の犯罪捜査では当然にパソコン等の電子機器やインターネット上のデータを捜索する必要が出てきます。そこで刑事訴訟法ではパソコンやCD、ハードディスクといった電子機器自体を差押えたり、内容をコピーして押収等をすることができるようになりました(218条2項等)。またインターネットを通じて他の電子機器とつながっている場合は、インターネット経由でそれについても捜索等ができるようになっております。しかし国犯法ではいまだそのような規定は存在しておらず、パソコンやインターネット上のデータを国税捜査官が調査するには、所持者等から任意に提供してもらう以外に方法はありませんでした。「パナマ文書」により発覚した租税回避地(タックスヘイブン)による租税回避のように昨今の国税調査にはパソコンやネットワーク上のデータの捜索は必須です。そこでこれらの電子データ等も臨検、捜索、差押えの対象となる見通しです。

(2)夜間の強制捜査
刑事訴訟法では日出前、日没後の夜間でも令状にその旨の記載を裁判所がすることによって捜索、差押え等を行うことが出来ます(116条1項)。また日没前に捜索、差押えに着手していれば日没後もそのまま継続することが許されます(同2項)。関税法でも現在、夜間の調査は認められております。一方国犯法は8条で「収税官吏は日没より日出までの間臨検、捜索又は差押をすることを得ず」として夜間の捜査を禁止しております。これまでは夜間に調査する必要があっても国税捜査官は捜査することができませんでした。今回の改正でこの点も改められることになっております。

コメント

昨今、IT技術に進化に伴い、経理上のデータや帳簿といったものまで自社のパソコンはもとより、クラウド等といったインターネット上に保管され運用される場合が増えてまいりました。それにより国税調査においてもこのようなITデータの調査は必須のものとなってきております。これまでは国税当局から要請があれば任意に従うか拒否するかの選択が可能でした。こちら側が拒否した場合はこれらのデータ等を捜査されることはありませんでした。本件改正がなされた場合には、パソコンやサーバー上のデータだけでなく、クラウド等のネット上のデータも捜索されることになります。こういった電子データは顧客情報等のプライバシー性の高い情報も多数含んでいる場合が多く、これまでの物理的な捜索対象とは異なる配慮が求められることになると言えます。刑事訴訟法上の捜査でも「捜索差押の必要性と並んで利用者のプライバシー保護を十分に考慮する必要がある。」とする裁判例も存在します。当局の権限濫用の防止策も法改正に盛り込む必要があると言えます。企業側としては、これまで強制捜査が及ばなかったネット上の電子データ等の扱いにも注意が必要となってくると言えるでしょう。

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