まもなく施行、改正育児・介護休業法について
2025/03/04 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般, 法改正

はじめに
昨年5月に可決・成立した改正育児・介護休業法の一部が4月1日から施行となります。男女ともに育児・介護と仕事を両立できるようにすることが趣旨です。今回は改正法の4月施行分を概観していきます。
法改正の経緯
育児・介護休業法では2022年に産後パパ育休制度が創設され、翌23年4月には男性の育児休業取得率、育児休業・休暇の取得率の公表が従業員1000人超の企業に義務付けられました。そして今回の法改正の趣旨は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置を拡充、育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等とされております。子の年齢に応じてフルタイムで残業をしない柔軟な働き方、そしてそのようなニーズに対応するため制度等の周知とその利用の意向の確認、さらには仕事と育児の両立支援に関する事業主の取り組みを一層促すことが目的となっております。以下具体的に見ていきます。
子の年齢に応じた柔軟な働き方に関する改正についてはまず、(1)子の看護休暇の見直しが挙げられます。従前は対象となる子は小学校就学の始期に達するまでとなっておりましたが、施行後では小学校3年生終了までとなります。取得自由も病気、怪我、予防接種、健康診断に加え感染症に伴う学級閉鎖、入園・入学式、卒業式となります。労使協定による継続雇用期間6ヶ月未満除外規定も撤廃されます。次に(2)所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大があります。請求可能となる労働者の範囲が3歳未満の子を養育する労働者から小学校就学前の子に変わります。そして(3)短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークが追加されております。これまで代替措置は育児休業制度に準ずる措置と始業時刻の変更だけでしたがそれにテレワークが追加されることとなります。また3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう事業者に努力義務が課されます。
育児休業の取得状況の公表義務の拡大等
育児休業取得状況について、これまでは従業員数1000人超の企業に公表義務を課しておりましたが、施行後は従業員数300人超の企業まで拡大されることとなります。公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」となっており、年1回公表前事業年度の終了後おおむね3ヶ月以内にインターネットなどで一般の方が閲覧できる方法で公表することとなります。また次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況等に係る状況把握、数値目標の設定を事業者に義務付けます。
介護離職防止のための支援強化等
介護離職防止のための支援強化ではまず介護離職防止のための雇用環境整備があります。介護休業や介護両立支援制度等の申し出が円滑に行われるよう事業者は、(1)研修の実施、(2)相談窓口の設置、(3)自社の支援制度利用の事例収集・提供、(4)自社の支援制度利用促進に関する方針の周知のいずれかを講じる必用があります。次に介護離職防止のための個別の周知・意向確認があります。介護に直面した旨を申し出た労働者に対し、事業者は(1)介護休業に関する制度、支援制度、(2)制度の申し出先、(3)介護休業給付金に関することについて周知することが義務付けられます。また個別に面談や書面交付、FAX、メール等で意向の確認が必用です。また介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供も求められます。そして要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講じることが努力義務化されます。
コメント
以上のように今年4月1日から改正育児・介護休業法の一部が施行されることとなります。育児や介護を理由とする離職を防止し、育児・介護と仕事の両立が図られます。子どもの看護休暇の取得対象や取得理由が拡充され、介護休業の取得要件緩和、残業免除期間の延長、そして育児休業取得状況の公表義務を受ける企業が従業員1000人超から300人超と大幅に拡大されます。また本改正法は施行が段階的となっており、10月1日からは3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に対するニーズの把握等の措置を講じる義務、また妊娠・出産の申し出時や子が3歳になる前に労働者への個別の意向聴取・配慮義務が施行される予定です。4月1日からどのような義務が課されるのか、また自社の対象となる従業員は誰かなど慎重に把握して準備を進めることが重要と言えるでしょう。
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