労働者派遣における注意点
2016/10/06   労務法務, コンプライアンス, 労働法全般, 労働者派遣法

初めに

 愛知労働局は、エヌ・ティ・ティ・システム開発株式会社が、同名古屋支店が受任した「一般事務及び伝票入力作業」業務を行うに当たり、法定の除外事由がないのに、自己の雇用する労働者以外の労働者を委任者の指揮命令を受けて労働に従事させ、もって、職業安定法44条で禁ずる労働者供給事業を行ったとして労働者派遣事業改善命令を発しました。
 派遣元事業主に対する労働者派遣事業改善命令(厚生労働省HP)
 本件では、エヌ・ティ・ティ・システム開発株式会社が、業務委託契約と称する労働者派遣事業及び労働者供給事業を行ったことが問題となりました。
 今回は、職業安定法44条が禁止する労働者供給事業とはどのようなものか、また、労働者派遣と請負・業務委託とも対比して見ていきたいと思います。

労働者供給とは

 労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることを言います。労働者供給事業は、職業安定法45条に基づき労働組合等が行う事業です。
 職業安定法44条は、原則として労働者供給事業を禁止しています。歴史的にみて、労働者の「供給」には、供給業者による労働者の強圧的支配が伴い、中間搾取が発生して、労働者を劣悪な労働実態におとし入れてきたからです。
 しかし、労働者供給事業は委託契約や請負契約の形式で脱法的に行われることが多いです。そこで、職業安定法施行規則4条1項で、請負といえるためには事業主が以下の4要件を備えることが規定されています。
1 作業の完成について財政上及び法律上の全ての責任を負う
2 労働者を指揮監督する
3 労働者に対し、使用者として法律上の全ての義務を負う
4 自ら提供する機械等若しくはその作業に必要な材料等を使用するもの又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うもの
 単に肉体的な労働力を提供するものではないもの

 この要件を満たさないときには、労働者供給事業となり、供給元と供給先も処罰の対象となります(職業安定法64条)。

労働者派遣、請負・業務委託との比較

 労働者供給と労働者派遣、請負・業務委託との違いを簡単にまとめると以下のようになります。
・労働者供給…供給先と労働者との間で雇用関係と指揮命令関係あり
・労働者派遣…派遣先と労働者との間に雇用関係なし、指揮命令関係あり
       派遣元と労働者との間に雇用関係あり
・請負・業務委託…注文主と労働者との間に雇用関係と指揮命令関係なし
         請負(業務委託)元と労働者との間に雇用関係と指揮命令関係あり
 注文主と労働者との間に指揮命令関係がある場合は、請負形式の契約により行われていても労働者派遣事業に該当することがあります。

コメント

 職場の雇用関係が多様化する中で、企業においては様々な雇用形態を利用すると思います。意図せず法律違反を起こさないように、契約の名称だけではなく、雇用実態に注意する必要があります。契約名称と雇用実態に乖離がないか、法令を遵守しているか、雇用実態に合致した各種法令を適宜参照すると良いでしょう。

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