AIを「営業秘密」として保護強化、経産省が検討会を設置
2016/09/28   知財・ライセンス, 危機管理, 特許法, 著作権法, 不正競争防止法

はじめに

経済産業省と特許庁は26日、人工知能(AI)やIoTといったデータについても「営業秘密」として保護し、知的財産権保護強化に向けて検討会を設置することを発表しました。これまで曖昧だったAI等のプログラムやデータの法的な位置づけを明確にし盗用や悪用された際の差止等を行いやすくすることが狙いです。

AIやIoTの問題点

人工知能(AI)とはArtificial Intelligenceのことでコンピューター上で人工的に人間と同様の知能を実現させようとする技術を言います。そしてIoTとはInternet of Thingsの略でテレビやAV機器と同じようにあらゆる「モノ」がインターネットに繋がり相互に情報交換を行っていく技術のことを言います。IT化が進む現代においてこれらのコンピューター上の技術も発明や著作物と同様に知的財産権としての重要性が増してきました。しかしこれらの法的な意味や位置づけは未だ曖昧であり第三者に盗用された場合等の法的保護が十分になされていないという問題を抱えておりました。これらのデータや技術は特許法上の「発明」や著作権法上の「創作物」に該当するとは言いにくく差止等の法的措置が取りにくいとされてきました。そこで不正競争防止法上の「営業秘密」として保護しようと考えられております。

特許法上の発明とは

特許法で保護されるべき「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」とされております(2条1項)。そして特許として登録されるための要件は①産業上利用可能であること②新規性③進歩性が挙げられます。特許法は産業の発展を目的としていることから産業上利用できるものである必要があります。そしてこれまで世の中に公表されたり実施されたことのない全く新たしいものでなければならず(新規性)、その分野の専門家であっても容易に発明できたとは言えないものである必要があります(進歩性)。プログラム等のソフトウェアも特許の対象にはなります(2条4項)。しかし数字の羅列や単なる情報では「発明」には当たらず、特許として保護されません。

著作権法上の著作物とは

著作権法上の「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するもの」とされております(2条1項1号)。創作者の思想や感情を含むものでなくてはならず単なる事実を伝えるものは該当しません。また他のものを模倣したものではなく創作者の個性現れている必要があり、それを表現したものが著作物に該当することになります。これも単なる数字の羅列や情報では、よほど特徴的でユニークなものでない限り創作物とは言えず「著作物」該当しないことになります。

不正競争防止法上の営業秘密とは

不正競争防止法2条1項4号から9号は「営業秘密」の不正取得や第三者への開示、利用行為を禁止しております。ここに言う「営業秘密」に該当するためには①秘密管理性②有用性③非公知性が認められることが必要です。まず「部外秘」「極秘」といった秘密である旨の表示やパスワード等でのアクセス制限がなされている必要があります。そして事業活動に有用な情報であり、未だ公然と知られていない情報でなくてはなりません。これは数字の羅列や単なる情報でも、秘密として管理され、事業活動に有益であり一般に知られていなければ該当し得ることになります。

コメント

以上のようにプログラム等のソフトウェアとして成立しているのであれば保護の対象になり得ますが、そこにいたらないAIやIoT技術は特許法や著作権法では保護することは難しいとされてきました。しかし不正競争防止法では秘密として管理していれば「営業秘密」として保護することは可能といえます。しかし昨今企業間の横の連携として、こういったデータを共有することも増えてまいりました。昨年11月には米グーグル社が画像や音声の認識等に使用するマシンラーニングソフトを無償公開しました。このように一般に知られ非公知性が失われた場合には不正競争防止法でも保護することは難しくなります。そこで経産省はこのような場合でもデータを保護できるように、企業間で交わした契約等に違反して開示する行為は「不競争行為」に位置づける方向で検討しております。経産省は今後大手企業1000社を対象にデータの保護方法やデータ共有の際の契約方法等の実態調査を進める方針です。これを踏まえて今一度データの扱いについて見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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