オワハラの法的問題点とは
2016/08/27   労務法務, 民法・商法

はじめに

 近年、就活時期の後ろ倒しや、就活市場の売り手市場化などを原因として、オワハラと呼ばれる企業による囲い込みがより活発化してきています。このオワハラに含まれる企業の法的リスクは何なのでしょうか。

オワハラとは

 オワハラとは「就職活動終われハラスメント」の略語で、企業が学生に対して内定と引き換えに就活を終わるように迫る行為全般を指します。具体的には、就活生に他社の辞退を強要する、就活生の他社の選考を妨害する、内定辞退をしようとした就活生を脅すなどの行為がオワハラにあたると考えられています。

採用内定とは

 そもそも採用内定とは何なのでしょうか。採用内定の法的性格は「始期付・解約権留保付労働契約」であるとする考え方が判例上確立しています(最判昭54.7.20 大日本印刷事件 民集33巻5号582頁)。つまり、正式な採用内定は、その時点で内定者と企業の間に労働契約が成立することになります。
 次に、「始期付」、「解約権留保付」という言葉の意味について説明します。実際に就労するのは(新卒者の場合)卒業後の4月からということで、「始期」が付いています。また、学校を卒業できなかった場合などには内定を取り消すことがある旨、内定を取り消す権利(労働契約の「解約権」)を留保しているので、「解約権留保」付となります。
 以上のように、内定者と労働契約が成立しているため、企業が内定者に対し他社への就職活動をしないよう要求することは、転職の際の労働者に対する引き止めの説得と同様に、ある程度は可能でしょう。そのため、他社への就職活動をしないよう要求することの全てが、直ちに違法となるわけではありません。

オワハラの法的リスク

 しかし、内定者に対して、あまりにも強度な働きかけを行った場合には、違法になる可能性があります。
 具体的には、刑法であれば脅迫罪(刑法222条)や強要罪(刑法223条)にあたるケースがありえます。
 脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、一般人を畏怖させることができる程度の害悪の告知をした場合に成立します。例えば、「内定を辞退して他企業に就職したら裁判で損害賠償を請求する」という場合は、語気の強さ、威圧感、場所などの状況によっては脅迫罪にあたる可能性も生じますので、このような表現は避けるべきと思われます。
 強要罪は、脅迫または暴行を用いて、他人に義務のないことを行わせた場合などに成立します。例えば、土下座をするように強い語気で迫ったような場合には、強要罪が成立する可能性があります。
 他には、オワハラについて民法上の不法行為責任(民法709条、710条)が成立する可能性があります。例えば、企業の強烈なオワハラによって応募者が精神的な苦痛を受けた場合には、その精神的苦痛に対する損害賠償責任が発生することになります。この場合の企業側が負う損害賠償の相場ですが、未だ確立した裁判例がなく不確定な状況です。ただ、パワハラの事例の相場(数万円~数百万円)が参考になる可能性はあります。
 以上の法的リスクに加えて、現代はSNSの発達に伴いインターネット上で企業の悪評が立つ危険性があります。

コメント

 新卒採用は、企業側にとって多大な労力と費用の負担が発生します。そして、内定者に辞退された場合は、その労力と費用が水の泡になってしまいます。さらに、優秀な学生を採用できなかった場合は、人事の責任問題ともなりえます。このため、企業は内定辞退を防ぐために内定者に対し入社の確約を取り付ける必要が生じています。一方で、就活生側は少しでも好条件の企業に入社したいと考えているため、内定後も就活を続ける人も多くいます。このような状況の中、オワハラという問題が表面化してきました。法務部門としては、オワハラによって刑法や民法上の問題点が発生しないように、日ごろから採用担当者に対して、オワハラの法的リスクの周知、徹底を図る必要があります。

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