国際カルテル防止へ、公取委が海外企業への課徴金を検討
2016/07/22   コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに

日経新聞電子版は21日、公正取引委員会が国際カルテル防止に向けて海外企業に対しても課徴金を課す方向で検討している旨報じました。日本企業が海外企業とカルテルを行った場合に日本企業だけでなく海外企業に対しても独禁法を適用できるのか。今回は独禁法の域外適用について見ていきたいと思います。

独禁法上の課徴金とは

課徴金とは入札談合やカルテル等の独禁法違反行為に対して課される金銭的制裁を言います。独禁法上課徴金納付命令の対象となる行為は、談合やカルテルと言った不当な取引制限(7条の2、1項)、支配型私的独占(同2項)、排除型私的独占(同4項)そして共同の取引拒絶、不当廉売といった一部の不公正な取引方法が挙げられます(20条の2等)。課徴金は罰金とは違い違法な利益を剥奪することが目的であることから、その算定方法は売上の何%というように決められております。談合やカルテルと言った不当な取引制限での算定率は製造業で10%、小売業で3%、卸売業で2%となっており、過去3年分の売上高を算定の基礎とします。

独禁法の域外適用について

海外企業が独禁法違反行為を行った場合に、日本の独禁法を適用して課徴金等を課すことができるのかという問題があります。これを独禁法の域外適用の問題と言われております。日本企業と外国企業がカルテルを結んだ場合、あるいは外国企業同士だけで談合等を行い日本での競争を阻害した場合に外国企業に課徴金納付命令を出すことができるのかということです。この域外適用の問題に関しては、そもそも日本の独禁法を適用できるのかという①立法管轄権の問題と、適用できるとしてどのように行政・司法上の手続を及ぼしていくかという②手続管轄権の問題に分けることができます。

(1)立法管轄権の問題
国際法上一般的には自国の国内法を自国の領域外に及ぼすか否かは各国の自由裁量に委ねられていると言われております。独禁法を外国企業に適用することも国際法上は可能ということです。そこでどのような場合に独禁法を域外に及ぼすかに関して、外国企業が独禁法違反行為の一部を日本国内で行っていた場合に適用する客観的属地主義と、独禁法違反行為による効果が日本にも及ぶ場合に適用する効果主義に分けられます。日本では従来一般的に客観的属地主義的な適用がなされてきました。しかし日本では客観的属地主義を採用してきたというわけではなく公取委の捜査能力や送達手続き上の不備からそうなってきたと言われております。

(2)手続管轄権の問題
日本の独禁法を適用するとして、外国企業にどのように行政・司法上の手続を及ぼしていくかが問題となります。まず問題となるのは書類の送達です。独禁法では原則的に民事訴訟法の規定を準用しますので(70条の17)民事訴訟法の規定に基づき日本に駐在する大使、公使、領事に送付嘱託をすることになります(民訴108条)。日本国内に営業所等がある場合にはそこに送達します。しかし課徴金納付命令等の強制力を伴った送達の場合には相手国の同意を要することも問題となります。このように外国への送達、捜査、強制執行という点で手続管轄権が域外適用に関して最も問題となります。

公取委の検討

以上のように国際的なカルテルに対しては従来日本企業に対してのみ課徴金を課すことがほとんどでした。独禁法を適用できたとしても公取委の捜査権等が及びにくく、また課徴金の算定についても日本国内での売上を基礎としてきたので日本に営業所等を持たない外国企業には課徴金を算定できないという不備があったからです。そこで外国企業に対しては日本国内のみならず当該国での売上も算定の基礎とし、また過去3年分との制限も撤廃する方向で制度改正を検討しております。

コメント

企業活動のグローバル化が進む中、国際的なカルテル・談合事件は増加の一途をたどっております。しかし日本の独禁法を適用することには以上のような問題があり困難な場合が多いと言えます。手続管轄権の問題に関しては昨今日本と外国との間で執行協力協定を結び、各国の当局と連携することで取り締まりを図っております。日本はアメリカやEU等と協定を結んでいますがそれ以外の外国企業が相手の場合には依然として取り締まりは困難と言えます。今回の公取委の制度改正によって独禁法上の問題点はある程度解消できると考えられますが、手続き面においてはやはり日本と他国との間での協定は不可欠と言えます。独禁法違反行為は公取委だけではなく、その直接の被害を受ける企業にとっても重要な問題です。法改正と共に国際協定の進捗についても注視していくことが重要と言えるでしょう。

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