下請取引の公正化についての取り組み
2016/07/07   コンプライアンス, 下請法, その他

はじめに

近年、業者が、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」といいます。)に反し、「報酬が支払われない」、「受領を拒否された」などのトラブルを起こし、法的措置・指導を受ける事案が多く発生しています。
このような事態を受けて、公正取引委員会は、下請取引の公正化を図り、下請法の違反行為を未然に防止するため、下請取引適正化推進講習会等の各種講習会を実施しています。
また、公正取引委員会は、7月1日、下請法の講習用動画「やさしく解説・よくわかる下請法講座~下請取引で困らないために~」を公開しました。((平成28年7月1日)下請法の講習用動画の作成・公開について)
下請取引に関与する事業者としては、違反行為に及ばぬようにどのような点に特に留意すべきでしょうか。

1.下請法の目的及び対象取引

⑴下請法の目的
我が国においては、中小企業が企業の大部分を占め、また、中小企業が下請取引を行うことが極めて多いという状況があります。
下請法は、①優越的地位にある親事業者の下請事業者に対する取引の公正化を図るとともに、②下請事業者の利益を保護することを目的としており(下請法第1条、以下法名を省略します。)、日本特有の法律と言えます。

⑵対象取引
下請法の対象とされる取引の範囲は、「取引の内容」と取引当事者間の「資本金」により区分されています(同法第2条第1項~第8項)。
ア 「取引の内容」による区分
まず、「取引の内容」によって、以下の4業種に分類されます。
①製造委託(例えば、プライベートブランド商品の製造・加工の委託など)
②修理委託(例えば、請け負った自動車修理業務の委託など)
③情報成果物作成委託(例えば、衣料品のデザインの作成委託など)
④役務提供委託(例えば、請け負ったメンテナンス業務の一部であるビルの清掃委託など)
イ 「資本金」による区分
次に、以下のように、取引当事者間の「資本金」による区分が設けられています。
第一に、製造委託・修理委託(・政令で定める情報成果物の作成と役務提供委託)については以下の取引が対象となります。
㋐資本金3億円超の親事業者と資本金3億円以下の下請事業者の取引
㋑資本金1千万円超3億円以下の親事業者と資本金1千万円以下の下請事業者との間の取引
第二に、情報成果物作成委託・役務提供委託については以下の取引が対象となります。
㋐資本金5千万円超の親事業者と資本金5千万円以下の下請事業者との間の取引
㋑資本金1千万円超5千万円以下の親事業者と資本金1千万円以下の下請事業者との間の取引

2.親事業者の義務及び禁止事項等

⑴親事業者の義務
下請法上の親事業者の義務については、以下の4つの遵守義務が定められています。
①書面の交付義務(第3条)
親事業者は、下請取引に際し、給付の内容、代金額、支払期日等を記載した発注書面を下請事業者に交付しなければならないとされています。
②書類の作成・保存義務(第5条)
親事業者は、発注時に定めた給付内容や、実際の受領期日・検査の結果、支払った代金額・支払方法等の、発注から支払いまでの取引記録の書類を作成し、2年間保存しなければならないとされています。
③下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)
親事業者は、発注時に、下請代金の支払期日を定めなければならないとされています。
④遅延利息の支払義務(第4条の2)
親事業者は、下請事業者に対して支払期日までに代金を支払う必要があり、期日までに支払わなかった場合には、遅延利息を支払わなければならないとされています。
 
⑵禁止事項(第4条)
下請法上の禁止事項については、以下のように定められています。
・受領拒否の禁止(第1項1号)
下請事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒むことが禁止されています。
・下請代金の支払い遅延の禁止(第1項2号)
発注した物品等を受領した日から60日以内に定めた支払期日までに下請代金を支払わないことが禁止されています。禁止行為の中で、この違反の件数が多いです。
・下請代金の減額の禁止(第1項3号)
下請事業者に責任がないのに、発注時に決定した下請代金を減額することが禁止されています。
・返品の禁止(第1項4号)
下請事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領した後に返品することが禁止されています。
・買いたたきの禁止(第1項5号)
「買いたたき」とは、発注する物品・役務等に通常支払われる対価(同種又は類似品等の市価や従来からの取引価格)に比べ、著しく低い下請代金を不当に定めることをいい、これは禁止されています。
・購入・利用強制の禁止(第1項6号)
発注する物品の品質を維持するなど正当な理由がないのに、親事業者が指定する物、役務を強制的に購入・利用させることが緊されています。
・報復措置の禁止(第1項7号)
親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、取引数量の削減、取引停止等の不利益な扱いをすることが禁止されています。
・有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第2項1号)
有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすることが禁止されています。
・割引困難な手形の交付の禁止(第2項2号)
一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付することが禁止されています。
・不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第2項3号)
自己のために、下請事業者に金銭、役務、その他の経済上の利益を不当に提供させることが禁止されています。
・不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第2項4号)
下請事業者に責任がないのに、発注の取消や発注内容の変更を行ったり、物品を受領した後に費用を負担せずにやり直しや追加作業を行わせることが禁止されています。

⑶違反した場合
下請法に違反した場合には以下の法的措置がとられます。そして、違反の有無は、形式的に判断されるため、例えば、発注書面の交付をしないことについて下請業者から承諾を得ていたとしても、親会社は書面の交付義務について定める下請法第3条に違反することになります。
・書面の交付義務及び書類の作成・保存義務に違反したときは、50万円以下の罰金(第10条)
違反した本人のほか、会社にも罰金が科せられます。
・違反行為に対する勧告(第7条)
違反行為をしていると判断された場合には、当該禁止行為の取りやめ・原状回復・再発防止措置などを求める勧告を受けることになり、これに従うかどうかに関わらず、企業名や違反内容などホームページで公表されることになります。
なお、違反の程度が軽く、勧告に至らない場合であったとしても、指導が行われ、改善報告書の提出が求められます。

3.近年の下請法の運用状況

下請法は、平成15年に改正され、積極的かつ厳格な運用がなされており、平成20年度以降は毎年度15件以上の勧告が行われている状況にあります。そして、平成26・27年度の勧告件数は、計7件、計4件と若干減少傾向にありますが、指導件数は平成22年度より増加の一途を辿っており、平成27年度には過去最多の5980件にまで上りました。また、勧告に関しては、「製造委託」及び「修理委託」に関するものが、総件数の大部分を占めています。

コメント

近年の違反・指導件数の増加に伴い、下請取引に関与する事業者としては、より一層下請法の理解を深めておく必要性が高まっていると考えられます。これは、親事業者のみならず、下請事業者にも同様に当てはまることであるといえます。今回公正取引委員会によって公開された動画などは、事業者が、より手軽に下請法を正しく理解するために重要なツールとなり得るでしょう。

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