「丸投げ」基準明確化へ、建設業法が禁止する一括下請とは
2016/06/10 コンプライアンス, 下請法, 建設
はじめに
国土交通省は9日、建設業法が禁止する「丸投げ」の判断基準を明確化する方針を示しました。国土交通省の諮問機関である建設業審議会と社会資本整備審議会により月内にも中間報告が出される見通しです。今回は建設業法が規制する一括下請について見ていきます。
一括下請とは
建設業法22条によりますと、建設業者は請け負った工事をいかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならないとし、また他人が請け負った工事を一括して請け負ってはならないとしています(1項、2項)。施工主等から請け負った工事を下請業者等に丸投げしてはならないということです。施工主は元請業者の施行能力、施行実績、管理能力、資力等を総合的に判断して依頼するものであり請け負った工事を下請業者のそのまま丸投げしてしまうと施工主の元請業者に対する信頼を裏切ることになります。また下請、孫請のように下請発注が繰り返された場合に責任の所在が不明確となり、事故や倒産といったトラブルが発生した場合に施工主に不測の損害が生じ得ます。中間業者の中間搾取を防ぐという意味合いもあります。こういった理由から工事の一括下請は禁止されております。なお民間工事の場合は施工主の同意により適用除外となりますが(3項)、公共工事については適用除外となりません。
一括下請の判断基準
ではいかなる場合に一括下請となるのか。請負業者は請け負った工事の主たる部分の施工に対し実質的に関与しなくてはならないと言われています。つまり工事に対して実質的な関与があるか否かで一括下請となるかが判断されます。「実質的関与」とは施工計画の策定、工程管理、安全管理、資材の品質管理、下請業者に対する技術指導等といった工事の総合的な企画調整行為を言います。つまり工事を主導的に管理していなければならず単に技術者を現場に置いているだけでは実質的関与に該当しません。またこの一括下請の判断は請負契約ごとになされます。下請業者に工事の一部を請け負わせていた場合、その一部も一つの契約に含まれていれば一括下請には当たりませんが、その一部について独立の請負契約が締結されていた場合には当たることになります。
違反した場合
建設業法22条に違反して一括下請を行った場合には行為態様、情状等を考慮して、再発防止を図る観点から原則営業停止処分となります(28条)。営業停止期間は1年以内で監督庁が決定することになります。行為態様が重大な場合や、営業停止中に営業を行った場合等には許可取消処分となることがあります(29条)。
コメント
以上のように一括下請に該当するかは元請業者が工事に実質的に関与しているかで総合的に判断されることになります。また各契約単位で判断されることになり、工事代金や費用の一部を取っていた等中間搾取の事実の有無は考慮要素に入りません。例えば1000万円で請け負った工事をそのまま1000万円で下請に出したとしても実質的関与が無ければ一括下請に該当します。また建物の周囲の側溝部分だけ下請業者に工事させた場合でもその部分が別の請負契約となっていれば一括下請に該当します。このように一括下請に当たるかは微妙な判断を要する場合が多く実際には一括下請が相当数に登っていると考えられております。一連の旭化成建材の杭打ちデータ改ざん問題も一括下請の横行が原因とも言えます。これを受け国土交通省は判断基準の明確化に乗り出しました。また違反に対しては厳格な態度を示しており、原則営業停止処分を受けることになります。工事を下請に出す場合には契約単位内か、実質的な関与をしているかを今一度確認することが重要と言えるでしょう。
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