マイナンバー漏洩時に想定される損害
2016/05/10   マイナンバー, 個人情報保護法

はじめに

今年1月に運用が始まってから4ヶ月余り経過したマイナンバー制度。その制度概要等については以前にも取り上げてきましたが、今回はマイナンバーが万一漏洩した場合に想定される損害等について見ていきたいと思います。

個人の損害

マイナンバーとは日本に住民票を有する全ての人に配布される12桁の数字です。それだけでは単なる数字の羅列に過ぎませんが、特定個人の情報と結びつくことで様々な不正に利用される危険が生じてきます。想定される不正利用としては、不正に行政上の手続きを行うこと、不正に個人情報の取得すること、不正に個人情報の取引等が行われることが考えられます。
(1)不正な行政手続き
マイナンバーを利用することによって、各種行政手続が簡便になることは政府・行政が謳っている通りですが、マイナンバーが漏洩することによって、他人が本人になりすまし不正に行政手続を行うことが考えられます。マイナンバーを使って実際に行政窓口で手続きを行うにはマイナンバーだけでなく、身元確認が必要です。住所地の市区町村に申請することによって交付されるマイナンバーカードを使えば、マイナンバーと身元確認がそれだけで行うことができます。このマイナンバーカードが盗難にあった場合、これを利用して離婚届や死亡届け、住民票の交付、印鑑証明等の行政手続が不正に行われる危険が生じます。また将来ネット上での手続きができるようになる予定ですが、カードに内蔵されているICチップによってログインし、これらの手続きが不正に行われる危険もあると言えます。

(2)個人情報の取得
来年1月からマイナポータルの運用が開始される予定となっております。マイナポータルとは情報提供等記録開示システムのことで、各行政機関を横断的に繋ぎ、自分に関する情報のやりとりの記録等を閲覧し確定申告等の手続きに役立てるためのインターネットを使ったオンラインシステムです。ログインするためには上記のマイナンバーカードのICチップを使用しますが、このマイナンバーカードを盗取した他人が本人になりすまし、当該個人の 情報を不正に取得することが考えられます。

(3)情報の不正取引
上記のようにマイナンバーが漏洩し、行政窓口やマイナポータルからプライバシー性の高い情報が取得されますと、さらにその情報を使って本人になりすまし、本人の知らないところで第三者によって消費貸借やクレジット契約が結ばれる等の不正取引のリスクが生じると言えます。またその情報自体を名簿業者等に流されたり、またインターネット上に流出するといった被害も想定することができるでしょう。

事業者の損害

事業者は従業員や契約相手から提供されたマイナンバーを源泉徴収票や社会保険資格取得届等に記載して行政機関に提出する義務を負っています。そしてその利用範囲は厳格に制限され、マイナンバーの取得、保管、破棄について厳重な漏洩防止が義務付けられています。万一漏洩した場合には刑事上の罰則だけでなく社会的な不利益を被るリスクを負っていると言えます。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号法)では罰則が規定されており、マイナンバーを取り扱う事務に従事する者が故意に個人情報ファイルを提供した場合は4年以下の懲役または200万円以下の罰金又は併科となっております(48条)。これらの者がその他漏洩行為をした場合には3年以下の懲役又は150万円以下罰金、そして法人である業者自体にもこれらの罰金が課されることになります(49条、57条)。またマイナンバーを漏洩させたという事実は事業者の社会的評価にもマイナスに影響するものと言えます。

コメント

マイナンバー制度を導入する以前から漏洩によるリスクは語られてきました。1930年代から社会保障番号制度を導入していたアメリカではなりすましによる年金や給付金の不正受給が後を絶ちません。その被害は年間数兆円に登ると言われております。マイナンバー漏洩による損害は個人や行政はもとより、マイナンバーを扱わざるをえない事業者にとっても非常に大きいものと言えます。それゆえに番号法に規定された罰則も個人情報保護法(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)に比して相当重いものとなっております。政府・行政はマイナンバー漏洩対策には万全を期している旨発表していますが、海外での事例からみても、完全に防止することは困難だと言えるでしょう。今後数年間でマイナンバー制度の利用範囲の拡大が予定されている中、そのリスクはさらに上昇していくことが考えられます。行政、事業者が一体となった漏洩防止の仕組み作りが重要と言えるでしょう。

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