有料ガチャの法的規制と新ガイドライン
2016/03/29   広告法務, 景品表示法, エンターテイメント

はじめに

日本オンラインゲーム協会(ガンホーやミクシィ、gumi、KLab、サイバードなどが加盟)は、先月下旬、改正景品表示法その他のオンラインゲームに関わる国内法に対応した新ガイドラインを発表しました(4月1日に施行予定)。近年、オンラインゲーム上の有料ガチャをめぐっては、懸賞景品制限告示で禁止されている「カード合わせ」や景品表示法にて規制される「有利誤認表示(第4条第1項第2号)」との絡みで、消費者との間で法的トラブルとなるケースが後を絶ちません。今回の記事では、有料ガチャに対する法的規制を紹介すると共に、日本オンラインゲーム協会の発表した新ガイドラインの内容を見て行きたいと思います。

有料ガチャに対する法規制

「ガチャ」とは、100円玉を入れてレバーを回すとカプセルに入ったオモチャが出てくる、いわゆる「ガチャガチャ」に由来するもので、ランダムにアイテムを入手できるオンラインゲーム内のシステムを言います。中でも、有料ガチャは1回ごとに課金を伴い、携帯電話の使用料と一緒にガチャの料金を支払うことになります。有料ガチャに対しては、主に、以下の3つの法規制があります。

カード合わせの禁止

懸賞景品制限告示第5項では、2種類以上の絵柄のついた符票(アイテム・カード・キャラクターetc.)のうち、異なる絵柄のついた特定の組合せを達成した際に、特別なアイテムや能力・キャラクター等を「景品として」提供することを全面的に禁止しています。過去に流行った、いわゆる「コンプガチャ」の一部は、このカード合わせに該当するとされています。

【カード合わせの例】
・有料ガチャでアイテムAとアイテムB、アイテムCを揃えると、アイテムXが手に入る場合
・有料ガチャによってアイテムAとアイテムBを揃えると、Bが消滅し、Aのみが残り、Aの攻撃力が増強される場合

優良誤認表示の禁止

景品表示法では、品質・規格等について、実際のものよりも著しく優良であると示し、不当に消費者を購買に走らせるような表示を禁止しています(第4条第1項第1号)。
例えば、「Sレア以上確定ガチャ!」と書かれて販売されたアイテムが、実際は「よりレア度の高いSSレアは出ず、Sレアしか出ないガチャ」だった場合や、有料ガチャによって獲得したキャラクターの実際の能力と表記が違っていた場合などは、この優良誤認表示にあたる可能性があります。

有利誤認表示の禁止

同じく景品表示法では、価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させ、不当に消費者を購買に走らせるような表示を禁止しています(第4条第1項第2号)。例えば、「こんなに当たる!」と、あたかもガチャが当たりクジだらけであるかのような表示を見せつつ、実際は消費者の求めるアイテムが全然当たらないといった場合には、有利誤認表示と認定されるおそれがあります。

日本オンラインゲーム協会の新ガイドライン

日本オンラインゲーム協会では、こうした法規制に対応すべき、以下のような概要の新ガイドラインを発表しています。

ガチャページへの以下の情報の掲載

①利用者が獲得できる全ての有料ガチャアイテム
②有料のガチャレアアイテムを提供中の場合は、当該ガチャレアアイテム
③数量限定又は期間限定で有料ガチャアイテムを提供している場合は、その提供数又は提供期間等
④キャンペーンにより販売中のガチャアイテムの提供割合を変更する場合、当該変更の条件と変更の度合い
※キャンペーン開始日の前日までに表示することを推奨。
⑤特定の有料ガチャアイテムの提供割合を上げるときなどで比較対象表示を行う場合、比較対象となる有料ガチャの名前や販売期間等
⑥重複して同一の有料ガチャアイテムを入手する可能性の有無及びその条件等
⑦有料ガチャにおいて不具合が発生した場合には当該事実

有料ガチャの設定について

①ガチャレアアイテムの金額設定と推定取得金額・提供割合の表示
有料ガチャにおいてガチャレアアイテムを提供する場合、以下のいずれかを遵守する。
a. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限は、有料ガチャ1回あたりの課金額の 100 倍以内とし、当該上限を超える場合、ガチ ャページにその推定金額または倍率を表示する。
b. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限は 50,000 円以内とし、当該上限を超える 場合、ガチャページにその推定金額を表示する。
c. ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示する。
d. ガチャアイテムの種別毎に、その提供割合を表示する。

②提供するガチャアイテムの価値
有料ガチャについては、以下のいずれかを遵守する。
a. 有料ガチャ1回利用時に提供されるガチャアイテムの価値は、有料ガチャ1回の価額と同等またはそれ以上と する。
b. 有料ガチャ 10 回利用時に提供されるガチャアイテムの提供割合の期待値上の価値は、有料ガチャ 10 回の 価額と同等またはそれ以上とする。
c. 有料ガチャの利用金額の総計が 5,000 円の場合、有料ガチャから提供されるガチャアイテムの提供割合の 期待値上の価値は、5,000 円と同等またはそれ以上とする。

③何らのガチャアイテムが提供されない可能性がある有料ガチャの提供は行わない。

有料ガチャの運用に関する事項

①提供割合変更時の事前告知
ガチャアイテムの提供割合は、事前の告知無くこれを変更しない。ただし、緊急を要する場合はこの限りではないが、変更の可能性が生じた時点から可及的速やかにその旨を告知するよう努めるものとする。

②有料ガチャの運用責任者の設置
a. 運用責任者は、有料ガチャの提供の前に、当該有料ガチャにおけるガチャアイテムの提供割合を承認するもの とし、当該承認の事実を書面等により記録する仕組みを社内に構築するものとする。
b. 運用責任者は、有料ガチャが設定された通り適切に稼働することを確認し、書面等により確認の結果等を記 録する仕組みを社内に構築するものとする。

③提供割合の変更を容易にさせないシステム設計
有料ガチャにおけるガチャアイテムの提供割合を安易に変更できないよう、システムの設計に留意するものとする。

これらに加え、内部監査に関する事項なども定められています。

コメント

有料ガチャに対する景品規制が厳しくなっている理由としては、景品の当選率への錯覚が生じやすいこと、その錯覚により購買に走らせる効果が高いこと、子ども向けの商品に用いられることが多く、子どもの射幸心をあおる度合いが著しく強いことなどが理由として挙げられています。さらに、オンラインゲーム上の課金については、カード払い・携帯料金とのまとめ払い等といった支払い方法がとられており、身銭を切っている感覚が希薄なことも、一層、消費者を購買に走らせてしまう危険な要因となっていると考えられます。その意味では、業界各社が集う日本オンラインゲーム協会がこうした自主規制を率先して行うのは歓迎すべき流れだと思います。日本オンラインゲーム協会は、4月15日には、モバイルコンテンツフォーラム(グリー、コロプラ、サイゲームス等が加盟)と共同で新ガイドラインの説明会を開くなど、自協会内に留まらず、業界全体を巻き込んで、法令に沿った有料ガチャが展開されるよう、さらなる取り組みを行うようです。
有料ガチャが問題となるということは、それだけゲームコンテンツの魅力が高いということだと思います。ゲームコンテンツに魅力がなければ、ガチャで入手できるアイテム等に消費者は魅力を感じないからです。これからのオンラインゲーム業界では、①ゲームのクォリティの追求と②法令遵守体制の構築、これら両方を高いレベルで進めて行くことが求められています。

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