約35%が違法時間外労働!36協定の役割とは?
2016/02/29 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
厚生労働省は昨年11月に実施した過重労働解消キャンペーンの一環として行った重点監督の結果について2月23日発表しました。それによると約74%の事業場で労働関連法規違反があり、そのうち約46%の事業場で違法な時間外労働があったとしています。今回はいわゆる36協定と時間外労働について見ていきたいと思います。
36協定とは?
労働基準法32条によりますと、1日の労働時間は8時間、1週の労働時間は40時間が限度とされており、この法定労働時間を超えると違法となり、罰則の適用があり得ます。例外的に法定労働時間を超える労働が許される場合として、36条では使用者と労働組合又は労働者の過半数を代表する者と書面で協定を締結し、行政官庁に届け出た場合が定められています。これがいわゆる36協定です。残業をさせるためには36協定の締結が必須のものとなります。
(1)締結当事者
36協定は使用者と労働組合又は労働者の代表者と締結することになります。労働組合がある場合は労働組合と締結しますが、無い場合は労働者の代表者と締結することになります。この代表者には要件があり①管理監督者に該当しないこと、②労働者の中から投票・挙手等により選出されたものであること、に該当する必要があります。
(2)限度時間
36協定を締結したら、法定労働時間を超えて無制限に労働させることができるというわけではありません。36協定による時間延長にも制限があり、「労働時間の延長の限度等に関する基準」という厚労省告示によって定められております。それによると1ヶ月の場合45時間、1年の場合360時間が限度となります。ただしこれには例外があり、土木建築、運送、専門科学技術者等、業務の特性上時間延長の限度が適用されない業種も存在します。
(3)特別条項
このように36協定による労働時間の延長も限界がありますが、36協定に特別条項を付けることによって限度時間を超えての労働も可能となります。特別条項とは、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に、一定時間延長することができるという付則です。特別条項はあくまで臨時的な特別の事情に備えるものであって、恒常的に時間外労働をさせるために締結できるものではありません。つまり具体的にどのような事情が発生した場合に延長ができるのかを定める必要があります。大規模クレーム、納期の逼迫、決算期、ボーナス商戦といった場合が該当するでしょう。具体的に定めず、「業務上必要な時」といった抽象的な定めは不可となります。また特別条項は時間の限度はありませんが、延長回数に限度があります。1ヶ月単位で年に6回までが限度回数となります。つまり年に6回までしか限度時間を延長できないということです。
コメント
以上のように法定労働時間を超えて労働をさせるには36協定の締結が必須となりますが、厚労省の監督調査によると、36協定が守られていない、あるいは36協定の締結すら行われていないといった事業者も相当数に登るようです。今回の厚労省の過重労働解消キャンペーンでの重点的な検査項目として36協定が挙げられていますし、労基署の監督官が調査に入った場合も必ず36協定は確認されることになります。36協定の締結に際しては、限度時間、特別条項といった内容面だけでなく、締結相手である労働者側にも注意が必要です。労働組合がある場合はその組合と締結することになりますが、無い場合は労働者の中から民主的に選ばれた者が代表として締結しなければなりません。いわゆる店長といった管理者に任命しておきながら協定の締結相手とした場合は、残業代支払い、限度時間等を潜脱するためと見なされる恐れもあるので注意が必要と言えるでしょう。
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