社長逮捕事例に見る外為法の輸出規制
2016/02/23 法務相談一般, 民法・商法, その他

はじめに
貿易会社「聖亮商事」社長金賢哲容疑者(48)は、18日北朝鮮に食品や日用雑貨を輸出したとして外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の疑いで逮捕されました。海外との取引が益々増える昨今、意外な物品輸出が外為法違反となることもあり得ます。今回は外為法の輸出規制を中心に見ていきたいと思います。
外為法による規制
外為法は、日本と国際社会の平和で安全の維持、健全な国際経済の発展に寄与することを目的として、対外取引の必要最小限の管理調整を行うための法律です。外為法による輸出規制の仕方には二種類あります。まず、大量破壊兵器の原料・材料となる物品の輸出を原則禁止とし輸出する際には経産大臣の許可を必要とするものです。そしてもう一つは政府が閣議決定した経済制裁を実現するために政令という形で禁止範囲を設定するものです。上記の事例では後者の場合にあたり、経済制裁として全面的に輸出が禁止された国への輸出であるとして摘発されております。
規制方法
外為法は輸出に際して許可を要するものとして、貨物と技術を規制の対象としています(25条1項、48条1項)。具体的には、輸出令別表第1及び外為令別表に列挙してある貨物・技術に該当するかをまず判断し、該当しないものであったとしても転用が可能なものであるかを判断していくことになります。
(1)リスト規制
輸出令別表第1には1項から15項までの規制対象貨物が列挙されています。以下主な規制対象を列挙しておきます。
①銃砲、爆発物、火薬、軍用車両等、大量破壊兵器そのものと言える貨物。
②核燃料、重水素等の核兵器の材料。
③化学兵器の製造に必要な機材。
④ロケット等の製造に必要な材料機材等。
⑤人工衛星の製造に必要な材料機材等。
⑥精密加工ができる工作機器等。
⑦集積回路、マイクロ波用機器、超電導装置及び部品、高圧コンデンサー等。
これらの規制対象は比較的わかりやすいものと言えますが、これ以外にも光ファイバー、アルミニウム粉、土木機械、ディーゼルエンジン等といったものも該当する場合があります。また技術に関しても、外為令別表には上で列挙したものに関する技術等が列挙されています。これらに該当する場合には経産省の許可が必要となってきます。
(2)キャッチオール規制
上記リスト規制品に該当しなくても、大量破壊兵器の開発に使用されたり、転用される可能性がある場合には経産大臣の許可を必要となってくるのが、いわゆるキャッチオール規制です。キャッチオール規制は客観要件とインフォーム要件の二つの要件により規制されています。客観要件とは、輸出者が用途の確認や需要者の確認を行った場合に、大量破壊兵器又は通常兵器の開発製造に用いられるおそれが発覚した場合です。インフォーム要件とは経産大臣から特にそれらのおそれがあると通知がなされた場合を言います。これらの場合にはやはり経産大臣の許可が必要となります。
コメント
以上が外為法による輸出規制の大枠ですが、貨物によっては規制対象に該当するかの判断が困難なものも多く存在します。また技術に関しては自己使用目的で海外に持ち出す場合は該当しませんが、貨物に関しては自己使用目的であったとしても該当することになります。自己が直接輸出しなくても、第三者の輸出の仲介をすることも規制の対象となっております。外為法に抵触するかはかなり微妙な判断を要することも多いと思いますので、新たに海外へ輸出する際には経産省の窓口や専門家と相談して判断することが無難ではないでしょうか。
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