「第三者委員会」とは何か:企業不祥事対応の特効薬
2016/01/22   コンプライアンス, 民法・商法, その他

1 企業不祥事対策の定番となった第三者委員会

 アグリフーズの異物混入事件の頃から注目され始め、最近は、大手企業の不祥事が発覚すると「第三者委員会」や「調査委員会」が設置されるのが定番となっている。また、設置後一定期間がたつと調査報告書が公表され、なかには、すき家の第三者委員会報告書のように労働環境の過酷さを「蟹工船」と表現して話題となったものもある。ところで、そもそも「第三者委員会」と「調査委員会」とは何が違うのか?また、外部の専門家に費用を支払う「第三者委員会」にどんな効果が期待できるのか?このような点を見ていきたい。

2 第三者委員会とは何か?いわゆる「調査委員会」との違い

 日本弁護士連合会が策定したガイドラインによる定義によれば、第三者委員会とは、企業や各種団体(以下、「企業等」と総称)において不祥事が発生した場合および疑いがある場合、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である。
 ポイントは、企業等のステークホルダーのために、中立・公正で客観的な調査を行うことを重視している点だ。そこで、日弁連ガイドラインでは、主に次のような基準を設けている。
① 第三者委員会の委員は、調査対象の企業等の役員・従業員の他、当該企業と利害関係のある者は就任できない。具体的には、顧問弁護士等はケースによっては就任できないなど、独立性や中立性を重視している。また、委員はコンプライアンス、ガバナンス等に精通した者であることを要求される。
② 第三者委員会の権限として、調査のスタッフ弁護士や関連専門家を選任できる。
③ 調査にあたって、第三者委員会は、企業等の有するすべての資料・情報・社員にアクセスすることが保証される。
④ 調査の手法についても、ヒアリング、書証の検証、証拠保全等をして、不祥事に関係する事実を正確、多角的にとらえるよう努力することが第三者委員会に対して求められている。
⑤ 企業等が調査を妨害したり、十分な協力をしない場合はその状況を調査報告書に記載できる。
 このように、厳格なルールのもとに運用されるのが第三者委員会である一方で、「調査委員会」についてルールは全くない。「調査委員会」のなかには、不祥事のあった企業の副社長と顧問法律事務所の弁護士で調査委員を構成したものもあり、企業の自主調査と全く変わらず、その調査内容の信用性に疑問があるような事例も散見される。

3 第三者委員会の報告書には、格付けがある

 第三者委員会が公表した報告書は、さらに第三者委員会報告書格付け委員会(以下、「格付け委員会」によって格付けされる。この格付け委員会は、日弁連ガイドラインで中心的な役割を果たした久保利英明弁護士らが委員となり、調査報告書を各委員がAからFで評価した格付け結果を公表する。過去の格付け結果は、平均してCからDであり、なかなか厳しい格付けが実施されている。第三者委員会の調査が本来の目的を果たしているかをチェックして、レベルを維持することが目的だ。

4 効果はあったか?マルハニチロの復活

 では、第三者委員会による調査や報告は、不祥事の会社にどのような効果をもたらすか?
アグリフーズ事件でその親会社であるマルハニチロは、2014年5月に第三者検討委員会から事件の背景に脆弱なガバナンス体制やコンプライアンス意識の低さなど企業風土があるという厳しい報告を受けた。そこで、マルハニチロは、報告書で指摘されたフードセーフティ、フードディフェンスを確立し、グループ内で疎外されていたと指摘を受けたアグリフーズをマルハニチロに合併して新たな管理体制を構築した。これによって、小売店や消費者の信頼が回復し、マルハニチロの冷凍食品の販売量は回復傾向となった。2015年4から12月期の連結経常利益は前年同期に比べ3割増の予想だ。また、2014年5月21日に最安値1498円だった株価は、2016年1月段階で1900円以上を維持している。第三者委員会の厳しい報告書が企業を救う結果となる良い例かもしれない。

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