独禁法違反、第三の解決策導入に向けて
2015/11/19   独禁法対応, 独占禁止法, その他

1.新しい解決策現る?

 これまでの独占禁止法(以下、「独禁法」という)では独禁法違反の疑いが生じた場合、企業が取れる対処方法は①排除措置命令や課徴金処分を甘受するか、②それらを不服として法廷で争うという二つの手段しかとり得なかった。
 国内法の改正を追っていっても、概ね上記①及び②の枠内で早期解決を目指すものが多かった。近年のものでは、2005年に設けられたカルテルや談合について自主的に申し出た企業について先着5社まで課徴金を減免するリニエンシー制度、2009年の優越的地位乱用を課徴金の対象への包含等が挙げられる。
 そしていま、TPPで導入が義務付けられたことを契機に、新たに第3の方法として「確約制度」の導入が検討されている。来年の通常国会で提出する予定の改正法案に盛り込まれるとされている。

2.「確約制度」とは

 「確約制度」は、独禁法違反につき公正取引委員会(以下、「公取委」という)が法的な問題点を指摘し、それに対して企業が自ら解決案を提示するなど自主的に解決することを約束した場合に公取委が本格的な調査に入らず、また違反認定も行わないというものだ。
 国内法においては公取委が指摘した問題点につき企業自身が解決案を考え提示する自主的な是正をする点で目新しく、処分や法廷での争いを回避して短期間で解決することによりビジネスを停滞させないというメリットは大きい。また、2005年以前に設けられていた右制度類似の「同意審決」と比較すると、企業が公取委に解決案を提出する点では共通するが、「同意審決」では企業の独禁法違反が確定するのに対し、「確約制度」では独禁法違反という汚点が残らないという点でもメリットが認められる(なお、「同意審決」制度そのものは、行政庁自らが行った処分について当否を判断するのでは公正さが担保できないという理由から2013年改正により廃止された)。

3.今後の企業のあり方について

 「確約制度」は独禁法に違反してしまった“後”について新たに解決策が追加されるという話であるが、企業にとっては違反しないに越したことはない。公正取引委員会の2015年3月の報告によれば、近年国内企業やその従業員が海外の独禁法違反による処罰を受けるケースが増えており、独禁法コンプライアンスの態勢の脆弱さが問題となっているとのことだ。カルテル等の違反行為自体は共通しているものの、海外の独禁法につき違反行為に係る成立要件、法執行に係る手続、違反行為に対する制裁減免のツール等についての差異についての調査、企業内体制の整備が追いついていないという企業の実情が露呈している。
 海外の独禁法に準ずる法律の処罰は厳しい。例えばアメリカではカルテルの罰則は法人については1億ドル以下の罰金、個人の場合には100万ドル以下の罰金若しくは10年以下の禁錮刑又はその併科である(シャーマン法第1条) 。罰金額については、違反行為につき獲得した利益又は与えた損害額の2倍まで引上げることができる(公正取引委員会ホームページより引用)。この他にも、資料の破棄などにつき調査妨害とみなされ課徴金が課されるリスクや、複数の国や地域にまたがってグローバルビジネスを展開する場合に一企業が当該複数の当局から調査や執行を受けるリスクもある。他方で、調査に対して協力的な態度で応じるなど柔軟な対応をすれば解決の糸口がつかめることもある。
 企業は、まずは国内法の改正に準備・対応すること、そして海外の独禁法についてのコンプライアンスマニュアルについてリスクマネジメントの一環として企業内で再検討・周知徹底し、違反の対象とならないように今一度社内体制を見直すこと、といった対処が迫られるだろう。

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