プライベートでどこまでやったら会社から懲戒処分を受けるの?
2015/10/26   労務法務, 労働法全般, その他

いつの間にか一大イベントになったハロウィン。華やかなイベントの裏で去年から日本の各地で様々なトラブルが報告されています。例えば、警ら中の警察官の顔面を殴ったとして暴行・公務執行妨害容疑での逮捕、女性に対する痴漢行為で迷惑防止条例違反で逮捕に至った事例が多数報告されています。ハロウィンにかぎらずプライベートの時間で起こした行為について民事・刑事上の責任を負うことは当然としてもなぜ企業の懲戒処分までなるのか、懲戒の根拠、大まかな判断基準と私生活上の行為で懲戒処分の対象となるかの例を紹介したいと思います。

1 懲戒の根拠

労働者が企業と労働契約を締結すると労務提供義務のほかに企業の秩序を維持・遵守する義務(企業秩序遵守義務)を負います。この企業秩序遵守義務に違反するかどうかは具体的には就業規則の懲戒事由規定がありかつ当該規定に該当するかどうかで判断されます。よってたとえ私生活上の行為であっても就業規則で「不名誉な行為をして会社の体面を著しく傷つけたとき」等の私生活上の行為も含まれそうな規定があれば懲戒の根拠となってしまいます。

2 判断基準

 判例は就業規則の懲戒事由に該当すれば即懲戒というような機械的な運用は行っておらず個々の具体的な事情を踏まえて個別・具体的に懲戒事由該当性を判断しています。
おおまかに判例の判断基準を抽出すれば①処分対象となる行為の性質②会社がいかなる業務を遂行しているか③行為者の企業におけるポスト④社会その他に与える影響・一般的認識の有無等の事情を総合的に勘案して判断しています。

3 具体例

(1)男女関係
 妻子がいるにもかかわず教え子の女子高生と交際し肉体関係をもつに至ったケースで裁判所は懲戒処分を有効としました。この事案では①刑事事件といえないような場合でも個々の学生との距離感に違いはあるにしても③高校教諭として②立場上道理に反することをし、④そのことに関して社会一般の認識が共有されていることを重視したと考えられる事案です。パイロットが交際中の客室乗務員に傷害事件を起こした事案では②業務とは関係ない男女関係のもつれであるとし、企業秩序に違反しないものとして懲戒が無効となりました。男女関係は通常企業秩序に関わらないといえるので懲戒処分の対象となる可能性は低いと思われます。

(2)交通事犯
 バス運転手が休日中に酒酔い運転をしたケースでは①罰金4万5千円と比較的軽微であったにもかかわらず②バス会社に勤務し③公共交通機関の運転手という飲酒運転が特に戒められる立場である点を重視して裁判所は懲戒処分を有効としてした事案があります。しかし④バス運転手であるから懲戒処分は有効としているわけではなく被害者との示談が成立し寛大な処分を望む申立てがある場合に懲戒処分を無効とした事案もあります。飲酒運転に関しては近年刑罰が厳格化し、その取り締まりが強化されていることを踏まえれば運転業務に携わらない業務であっても懲戒処分の対象となることは個々の事情にもよりますが可能性は高くなるものと思われます。

(3)痴漢
 鉄道関係職員が繰り返し電車で痴漢行為を繰り返した事案について①都道府県の迷惑防止条例違反行為で②鉄道会社は痴漢行為を取り締まる立場であり、④再犯であることかつ痴漢に対して社会的非難が高まっていることを重視し、懲戒処分を有効としました。しかし痴漢であっても被害者と示談が成立、初犯である、マスコミ等に報道されず企業イメージを低下した事情が認められなければ懲戒処分の対象にならない可能性があるといえます。

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