司法取引制度導入法案の骨子
2015/09/18 コンプライアンス, 刑事法, その他

1概要
第189会国会において提出されている刑事訴訟法改正法案が成立すると日本においても、いわゆる「司法取引制度」が導入される。東芝の内部告発の件が耳に新しいが、本法案が成立・施行されれば、同じような事例が他にも出てくるかもしれない。そこで、司法取引制度の法案について整理してみようと思う。
2いわゆる司法取引制度の内容
(1)検察官、被疑者や被告人、弁護人が協議して、被疑者や被告人が他人の犯罪について供述することを条件に、検察官が被疑者や被告人の事件について、不起訴処分・求刑の引下げ等の処分を行うことを合意する制度である。(改正刑事訴訟法350条の2)
例えば、企業で組織ぐるみの犯罪があったとして、下部の社員が上層部の関与を供述することにより、自らは不起訴処分になるのである。
(2)本制度は、詐欺、横領、租税法違反、独占禁止法違反、金融商品取引法違反等企業犯罪として典型的にみられる犯罪が対象として含まれており、企業のコンプライアンス実務への影響は大きいと想定される。企業内の内部通報制度とは異なり、刑事上の不起訴処分や減軽を受けられるため、不正の内情をよく知る実際の関与社員が司法取引する場面が出てくることが想定され、その供述により捜査機関が組織ぐるみの犯罪であることを立証することが容易となる。また、企業内の他の不正が芋づる式に発覚するというような事例も想定されうる。そうなれば企業外からの信用は、回復できないほどに失墜してしまうだろう。
3企業のリスク管理
まず第一には、企業のコンプライアンスを徹底し、不正を失くすような体制を整えることである。そのためには内部通報制度や徹底的な内部監査体制の構築など防止策が重要となる。
しかし、それでも企業内に不正が起きてしまった場合を想定し、違反者の処分、迅速な調査委員会等の設置、再発防止策の策定、等の対応策を整えておくことが、企業のコンプライアンス担当者に求められるだろう。
4コメント
東芝の内部通報事件では、内部告発者は不正に耐え切れなかったという正義の思いなのか、それとも他の思惑があったのか、想像するしかできないわけであるが、司法取引制度が施行されれば、不正疑惑をもたれた時にそれに深く関わっていた社員が自らの減軽を求めて供述をする場面が今までより増えるだろうことは容易に想定される。司法取引制度をきっかけとして、コンプライアンス体制のより一層の整備が求められるだろう。
関連コンテンツ
新着情報
- セミナー
茂木 翔 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】暗号資産ファンドの最前線:制度改正と実務対応
- 終了
- 2025/05/29
- 12:00~13:00
- 業務効率化
- 法務の業務効率化
- ニュース
- さいたま地裁で「アドバンテスト」と従業員の男性が和解、持ち帰り残業の問題について2025.11.20
- 半導体検査装置メーカー「アドバンテスト」(千代田区)に勤める40代男性が、労働時間として記録さ...
- 解説動画
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分
- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード
- 解説動画
加藤 賢弁護士
- 【無料】上場企業・IPO準備企業の会社法務部門・総務部門・経理部門の担当者が知っておきたい金融商品取引法の開示規制の基礎
- 終了
- 視聴時間1時間
- まとめ
- 今年秋施行予定、改正景品表示法の概要2024.4.25
- 昨年5月に成立した改正景表法が今年秋に施行される見通しです。確約手続きの導入や罰則規定の拡大...
- 弁護士

- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階
- 弁護士
- 境 孝也弁護士
- さかい総合法律事務所
- 〒105-0004
東京都港区新橋3-9-10 天翔新橋ビル6階










