「民法改正で変わる請負契約」
2015/07/08 法改正対応, 民法・商法, 法改正, その他

未完成でも報酬が貰える?
請負契約において、報酬は請負人が注文されたものを完成させた場合に、その対価として支払われる。現行法では、原則として注文されたものを完成させない限り、報酬の支払いを注文者に請求できない。
これに対して改正法は、特定の場合において注文者に利益が生じていたならば、その時点で注文されたものは完成したとして、利益の割合に応じて注文者に報酬を請求できるように定めている。
その特定の場合とは、注文者に落ち度がない出来事により仕事完成が不可能となった場合、または注文されたものが完成する前に解除された場合である。
これは、判例によって確立された解釈を明文化したものであり、改正がなされれば、報酬支払請求に関するトラブルを当事間の話し合いなどによって事前に防止しやすくなるだろう。
しかし、どのくらい完成したかが明確な建物などはともかく、ソフトウェア等については、作成の段階によっては価値を具体的に見出せないため、利益の算出も困難となる場合がある。
そのため、事前に報酬の支払に関する問題を解決することが難しくなり、裁判に発展しても請求が認められないケースが想定される。
このリスクを回避するには、契約締結前に、完成したソフトウェアの価値、完成する可能性、注文者の利益を具体的に把握できる段階、未完成だった場合に発生が予想される損害などを詳細に分析した上で、利益を具体的に算定できる段階で報酬の支払請求ができるような条項を設ける必要がある。
もし注文者に納入した物が欠陥品だったら・・・
注文したものに欠陥があった場合には、注文者はその修理や損害の賠償を請求でき、契約の目的を達成することができない場合は請負契約を解除することもできる。
改正法では、その請求ができるのは注文者が欠陥を知った時から1年以内に限定されるが、注文されたものを納入した時点で請負人が欠陥の存在を知っていた場合、または重大な過失により知らなかった場合においては、その制限が適用されない規定も追加された。
もっとも、コンピューターソフトなどの情報処理システムの開発については、テストを重ねても不具合を100%防げない。
例えばシステムに不具合があるにも関わらず、注文者の都合で納期を早められたような場合、開発者に欠陥の原因につき落ち度がないのに、引渡し時に欠陥の存在を知ったまま納入したことになる結果、期間制限が適用されないことになってしまう。
そこで、不具合を完全に防ぐことができない物の完成を目的とする請負契約について、請負人が遅滞なく注文者からの修補に応じた場合や他の相当な代替措置を講じた場合は、注文者が欠陥を知ったときから1年を過ぎたとしても、契約の解除や損害賠償請求を免れるような規定を、契約締結の段階で設ける必要があるように思える。
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