改正景品表示法の課徴金制度とは
2015/06/29   広告法務, 消費者取引関連法務, 景品表示法, その他

概説

 食品偽装問題が数年前から新聞各紙を賑わせるようになり、この問題への対応として、昨年、景品表示法が改正された。当サイトの法務ニュースでも度々改正景品表示法についての記事を掲載している。今回は、同法の課徴金制度導入に関する部分について説明したい。なお、課徴金制度導入に関する改正法の施行は、公布の日(平成26年11月27日)から起算して1年6ヶ月以内の政令で別途定める日からとされており、今のところ正式な施行日は決まっていないが、遅くとも来年の春頃までには施行される見通しだ。

課徴金制度導入の背景

 現行の景品表示法上は、事業者による違反行為が行われた場合に「措置命令」(同法6条)が出されることになっている。この「措置命令」とは、不当表示行為の差止め、再発防止のために必要な事項、これらの実施に関する公示その他必要な事項とされている。この措置命令により、事業者は企業名が公表され社会的信用を失うという制裁を受けることになる。しかし、被害者である一般消費者が受ける損害(例えば、実際に支払った金額と本来支払うべき金額との差額等)は、不当表示行為と損害との間の因果関係が不明であるといった理由により回復されないことが多い。また、企業によっては社会的信用の失墜が違反行為を防止するインセンティブとして機能しない場合も想定される。
 そこで、課徴金制度は、企業のいわゆる「やり得」を防止するために、違反者に対して経済的不利益を課すことで、違反行為を事前に防止する動機付けとして機能することが期待されて規定された。ここで注意しなければならないのは、課徴金制度は事業者に罰金を課すというものであり、この罰金が消費者への返金に充てられるわけではないということである。

課徴金制度の概要

① 対象行為
 対象となる行為は、優良誤認表示(実際よりも良い商品・サービスであると誤認させること)・有利誤認表示(実際よりも安いといった有利な商品・サービスであると誤認させること)である。
② 賦課金額
 課徴金額は、対象商品・サービスの売上高の3%相当額である。
③ 対象期間
 売上高の対象期間は、原則、不当表示をやめた日から逆算して3年間が上限とされている。ただし、例外として、課徴金の対象となる違反行為をやめた後、そのやめた日から6ヶ月を経過する日、又は事業者が違反行為により生じた誤認のおそれを解消するための措置をとった日のいずれか早い日までの間に、事業者が違反行為に係る商品やサービスの取引をしたときは、最後に取引をした日から逆算して3年間が上限となる。
④ 主観的要素
 違反事業者が、違反行為であると知らず、かつ、知らなかったのは相当の注意を怠ったからではない場合には、課徴金賦課の対象から除かれる。なお、相当の注意は、通常の商慣行を基準に判断される。
⑤ 課徴金額の減額・除斥期間
 違反行為を自主申告した事業者は、課徴金の2分の1が減額される。また、同法一般消費者の被害回復を促進するという目的を有していることから、事業者が消費者に自主返金した場合には、返金総額を課徴金額から減額される。
違反行為をやめた日から5年を経過した後については、課徴金は課されない。
⑥ 適用除外
 課徴金額が150万円未満となる場合(つまり、売上額5000万円未満の場合)には、課徴金を賦課しない。これは、課徴金制度の執行にかかる行政側の負担を考慮しての規定である。

コメント

 企業に対して課徴金が賦課された場合には、現行制度上の措置命令による公表と同様に、課徴金納付命令が出されたと公表されるため、企業の社会的信用が低下するという影響だけではなく、該当商品・サービスの売上げによっては莫大な経済的負担を負うことになりかねない。場合によっては、企業の存続が危ぶまれる事態に発展する可能性も十分に考えられる。企業法務を担当する者は、意図しない不当表示が発生することを防止する管理・チェック体制や、不当表示となった場合に備えて迅速に自主申告を行える体制を整えるなど、改正景品表示法に対処していくことが求められる。今後の消費者庁によるガイドライン等に注意していく必要があるだろう。

関連サイト

不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案の概要 消費者庁

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