中古住宅の販売時診断 義務化へ
2015/04/27 不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産

事案の概要
政府・与党は、専門家が中古住宅の劣化状況を調べる住宅診断を徹底し、仲介業者に販売時の説明を義務付ける方針を示した。購入後に欠陥が判明する事態を防ぎ、安心して売り買いできる環境を整備することで、買い手が付かず売れ残ってしまいがちな中古住宅の市場を活性化させる狙いである。5月に活性化策をまとめ、来年の通常国会に宅地建物取引業法の改正案を提出する予定である。
日本の中古住宅市場
欧米と比べ、日本の中古住宅市場は活発でない。日本では新築住宅が取引の大部分を占め、中古住宅の取引は1割強程度に止まる。
その原因のひとつとして、欧米ではもはや常識となっているホームインスペクションのような、住宅の耐久性や劣化状況を第三者が診断する仕組みが日本では普及していないことが挙げられる。中古住宅の購入者のうち住宅診断を利用した者は1割に満たないという。中古住宅市場の活性化策を欠くことにより、深刻さを増しているのが空き家問題である。2013年時点における全国の空き家は820万戸であり、これは住宅総数の13.5%を占めるものである。同年の住宅・土地統計調査によれば、東京都の空き家は81万7000戸であり、全国で最も多い。
今回の活性化策
今回の活性化策では、中古住宅の販売時における診断が徹底される。専門家が屋根、外壁、室内、床下等を目視して住宅の耐久性や劣化状況を診断し、水回り、傾斜、ひび割れ、シロアリなど補修の必要性を判定する。その上で、仲介業者に対し、買主への住宅診断結果内容の説明を義務付ける。具体的には、法改正で、契約前に確認する重要事項説明書に住宅診断の項目を設ける。これにより、居住後に発覚する欠陥を減らす。
また、住宅診断を実施したにも拘わらず、売主が説明していない欠陥が発覚した場合、買主は補修や契約解除を請求することができるようにする案を検討する。これにより中古住宅購入に向けた買主の安心感を高める。
一方で、住宅診断の通り欠陥がなければ、買主に補修等の請求権を放棄させる案も検討している。これは、売主を契約後のトラブルから保護するものである。
コメント
現在、住宅の過剰供給や少子高齢化による人口減少・世帯数減少に伴い、空き家の増加問題は深刻化している。放置された空き家には、倒壊のリスク、放火等の犯罪の温床となるリスクが生まれ、街の治安及び価値を毀損するといった懸念の声があがっている。
15年の税制改正では、空き家を放置することによる土地にかかる固定資産税の軽減措置(本来の6分の1)につき、倒壊の危険がある等の事由で勧告を受けた特定空き家には適用しないように見直されている。
住宅診断が普及すれば、安心して中古住宅を購入する人が増えると見込まれる。また、事業者にとっても、販売時に履践すべき手続は増えるものの、販売住宅の性能を予め説明することで、今まで売り損ねていた中古住宅の販売を拡大することができる。
各自治体は、空き家の有効活用に乗り出している。例えば四日市市では、育児世帯が空き家を購入した場合に費用を補助する制度を拡充している。仲介業者としては、中古住宅を修繕・リフォームし手ごろな価格で売り出せば、育児世帯など資力の少ない若年層の顧客拡大も見込める。
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