育休終了1年以内の不利益 直ちに違法 厚労省
2015/04/08 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
妊娠・出産を理由に退職等の不利益な取扱いをするマタニティーハラスメントに関し、厚生労働省は、3月31日までに、育児休業の終了などから原則1年以内に女性が不利益な取り扱いを受けた場合、直ちに違法と判断することを決め、全国の労働局に通知した。
マタニティーハラスメントの現状
男女雇用機会均等法では、女性労働者に対し婚姻、妊娠、出産等を理由として不利益な取扱いをすることを禁止している。妊娠や出産を退職理由とすることは許されず、また、それらを理由として解雇することも認められていない。
しかし、最近、妊娠・出産を理由に女性労働者を不利に取り扱う「マタニティーハラスメント(マタハラ)」が目立ってきている。具体的には、「妊婦には営業はできない」などと言い営業職から事務職へ異動させたり、産休・育休取得に際し女性労働者に「うちの会社は皆産休・育休なんか取らないで辞めていくのに」「図々しい」といった嫌味を言うなどの嫌がらせをしたり、妊娠中の女性労働者が自ら退職するよう仕向けるように職場環境を作り上げたりする等がこれに該当する。
現に、働きながら妊娠した経験がある女性の21%がマタハラを受けたことがあるとの調査結果が連合によりまとめられている。1月26日から2月2日の間、インターネットを通じて実施され、20歳から49歳の女性1000人の回答を集計したものである。具体的には、「口頭などで嫌がらせを受けた」が10%。「解雇、契約更新をしないなどの対応をされた」が8%、「重要な業務を任せてもらえないなどの対応をされた」が3%であった。
また、妊娠後に仕事を辞めた女性は61%であり、理由は「家事育児に専念するため」が最多の55%で、「仕事と育児の両立の難しさ」が21%、「職場で安心して出産まで過ごせないと考えた」が17%であった。加えて、7%は不利益な取り扱いを受けたことを理由に挙げている。
本通知について
本通知は、2014年10月に最高裁判所によりなされた「妊娠による降格は男女雇用機会均等法が原則禁止しており、本人の同意がなければ違法」との判断を受けて、厚生労働省が企業への指導を強化する方針を固め、同法の解釈をめぐる新たな考え方をまとめたものである。
これによれば、妊娠、出産、育休を一連の流れとし、妊娠期間中のみならず、育休や短時間勤務が終わってから1年以内に不利益な取り扱いを受ければ違法とみなされる。例えば、育休が終わった後すぐに、育児のため短時間勤務で働いていることや、長時間の残業はできないであろうということを理由に、退職・降格をさせるケースが考えられる。この場合、退職や降格等の企業の処遇は不当なものとされ、女性労働者からの慰謝料請求等の対象となる。仮に、退職などを迫った企業が当該処遇につき「業務上の必要性」といった特段の事情の存在を主張した場合、企業には説明責任が課され、債務超過や赤字累積など経営に関するデータの提出が求められる。
コメント
企業には、マタハラを発見したら率先して指摘すると同時に、業務配分を適正化するなどして、産休・育休を取得するのが躊躇われるような職場環境を是正し、妊娠中・育児中の女性労働者の保護を図っていくことが求められている。
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