不正競争防止法の改正の方向性
2015/03/11 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 不正競争防止法, その他

はじめに
営業秘密の保護・活用に関する中間とりまとめは、まだ具体的な条文形式にはなっておらず、およその方向性が示されているだけである。そのため、以下でもそれらの内容の要点を列挙するにとどめる。
民事規定
①営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等の禁止
技術上の営業秘密を使用する不正競争行為により生じた物品であることについて、その譲り受け時に悪意・重過失である場合等には、営業秘密侵害品について譲渡・輸出入等する行為を、差止・損害賠償の対象とする予定だ。その趣旨は、単に営業秘密の不正使用のみならず、その不正使用によって製造された侵害物品の譲渡・輸出入等をも規制対象とすることで、営業秘密侵害行為に対する抑止力を向上することにある。
②除斥期間の延長
除斥期間は、現行の10年から20年に延長する予定だ。その趣旨は、営業秘密流出等の営業秘密侵害行為の事実が発覚するまで長期間を要した場合でも被害者の救済を担保することにある。
③被害企業の立証責任の軽減
原告側が被告による不正取得や原告の営業秘密を用いて生産できる物を生産していること等を立証した場合には、被告による営業秘密の使用行為を推定し、不使用の事実の立証責任を被告側に転換する予定だ。その趣旨は、営業秘密侵害訴訟では侵害の事実は原告側に立証責任があるが、証拠は被告側企業の内部領域に偏在しているため、両者の公平性を図ることにある。
刑事規定
①処罰範囲の拡張
処罰対象を、現行の取得者(二次取得者)から、転得者(三次取得者以上)にまで拡張する予定だ。その趣旨は、ICT技術・端末の普及により、営業秘密が流通・拡散する危険性が上昇していることにある。
②法定刑の重罰化
罰金刑は、現行では個人1000万円以下、法人3億円以下だが、これらを引き上げる予定だ。その趣旨は、営業秘密は、特許等と異なり、漏えいによって価値が喪失するため、被害回復が困難であり、一層の抑止力の向上を図ることにある。
③非親告罪化
営業秘密侵害罪を非親告罪化する予定だ。その理由は、従来は刑事訴訟において営業秘密が漏えいして被害企業の被害が拡大する懸念があったが、平成23年法改正により、刑事訴訟手続の特例(秘匿決定や公判期日外での証人尋問など)による一定の手当てがなされたからである。
今後はいずれ、具体的な条文案が明らかにされると思われるので、その行方に注目しておきたい。
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